研究課題/領域番号 |
19K03547
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
熊ノ郷 直人 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (40296778)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 解析学 / 関数方程式論 / 経路積分 / 擬微分作用素 / 数理物理 / 確率論 |
研究開始時の研究の概要 |
経路積分の従来の数学研究は、擬微分作用素などの数学で開発された方法を、シュレディンガー方程式に対する時間分割近似法に適用し、物理で用いられる経路積分の存在を正当化することが中心であった。しかし、擬微分作用素は元々、様々な方程式を扱う一般理論であり、シュレディンガー方程式に限定されるべきではない。本研究は、逆に時間分割近似法を擬微分作用素などの数学で開発された方法に適用し、数学的存在だけの観点から様々な形の経路積分を創造し、数学的正当性だけの観点から可能となる演算を提案する。
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研究実績の概要 |
環状型(トーラス型)変数係数高階放物型方程式に対応し、一般的な汎関数を振幅としてもつ環状型相空間経路積分の数学的理論を構成した。より正確に言えば、時刻を変数としトーラス上に値をとる位置経路と整数値をとる運動量経路を変数とする汎関数の2つの一般的な集合を定義し、これらの汎関数の集合に属する汎関数を振幅としてもつ相空間経路積分の時間分割近似法が、位置経路の終点と運動量経路の始点に関し広義一様収束することを証明した。すなわち、環状型相空間経路積分が数学的に存在することを示した。さらに、この2つの汎関数の一般的な集合は、基本的な汎関数の例を含み、汎関数の和や積、位置経路や運動量経路に関する平行移動、位置経路や運動量経路の整数正則行列による線形変換、位置経路や運動量経路に関する汎関数微分の演算に関して閉じている。このため、基本的な汎関数の例に、これらの演算を組み合わせることで、相空間経路積分が可能な汎関数の多くの例を創ることができる。さらに、この相空間経路積分において、相空間経路積分と時間に関する積分との順序交換定理、相空間経路積分と極限との順序交換定理、位置経路と運動量経路の置換変換に関する相空間経路積分の不変性、運動量経路の平行移動に関する相空間経路積分の自然な性質、相空間経路積分における位置経路の汎関数微分に関する部分積分が成立することを証明した。これらの研究成果を論文としてまとめ、J. Pseudo-Differ. Oper. Appl. で出版し、インドの国際会議と愛媛大学のセミナーや日本大学の研究集会で講演した。また、これまで私が構成した時間分割近似法による様々な経路積分の理論について、Sugaku Expositions で解説した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の目標は環状型(トーラス型)の相空間経路積分を構成し、相空間経路積分が標準的な積分の性質に類似した性質を満たすこと、つまり、相空間経路積分と時刻に関する積分との順序交換、相空間経路積分と極限との順序交換、相空間経路積分における経路の平行移動や線形変換などの性質を調べることであったため、おおむね順調に進展していると言える。しかし、COVID-19の流行により、国際会議への参加や海外の研究者との研究連絡が十分にはできず、環状型の相空間経路積分の応用や理論のさらなる展開を考える上で重要となる、偏微分方程式や確率論など様々な分野の研究者から意見や刺激を得られなかった点が残念である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度までの研究で、環状型(トーラス型)相空間経路積分が存在し、和や積、経路の平行移動や線形変換、汎関数微分などの演算に関して閉じた汎関数の2つの集合を定義し、相空間経路積分の標準的な積分の基本的な性質に類似する性質、つまり、相空間経路積分と時刻に関する積分の順序交換、相空間経路積分と極限との順序交換、相空間経路積分における経路の平行移動や線形変換の性質を調べることができた。2023年度は、COVID-19の状況により制約される可能性があるが、偏微分方程式や確率論などの国際会議や研究集会、セミナーに積極的に参加し発表や調査を行い、様々な分野の研究者から意見や刺激を得ることで、環状型相空間経路積分の応用や理論のさらなる展開を考える予定である。
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