研究課題/領域番号 |
19K03618
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
池田 榮雄 富山大学, 理学部, 客員教授 (60115128)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 中心多様体縮約 / Bogdanov-Takens型分岐 / フロントダイナミクス / 3成分反応拡散系 / 特異摂動法 / 3成分競争拡散系 / 進行フロント解 / 進行パルス解 / 3次のJordanブロック型退化 / 反応拡散系 / パルスダイナミクス / 余次元2の分岐理論 |
研究開始時の研究の概要 |
空間1次元 FitzHugh-Nagumo型1活性-2抑制因子モデルにおけるフロントあるいはパルスダイナミクスを有限次元の系に縮約するとき,より簡便な常微分方程式の係数決定を提案し,それを解析することによって元の反応拡散系の様々なダイナミクスの全体像を明らかにすることが第1の目的である。さらにその結果を用いて,空間的非一様性の強さと進行フロント波や進行パルス波との相互作用のダイナミクス(非一様性のために出現した安定,不安定な定常解や周期解などの力学的構造)を明らかにすることが第2の目的である。これらの結果をさらに,3種競争拡散系に拡張することが第3の目的である。
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研究実績の概要 |
(1)三種競争拡散系の進行波解の分岐現象:この研究テーマに関して,2つの論文が受理された。一つ目は理論的な分岐構造の解析に関するものであり,もう一つは前者の理論を基礎とした応用に関する論文で数値計算やAUTOを駆使して,非常に興味深い内容となっている。(2)3重の0固有値を持つ退化に関して,バタフライ構造を内在した場合の解析を行った。まだ完全には解決出来ていないが,その解決方針が見えてきた。 (3)2変数反応拡散系に関する簡便な方法による縮約系の導出:これまで3変数ばかりに興味があったが,2変数系に対しても間便な方法で縮約系の係数が決定出来ることを示し,それを用いて非一様性との相互作用で非常に興味深いダイナミクスを明らかにした。(4)空間2次元の3種反応拡散系の進行スポット解の縮約系:このテーマの基盤となるstanding spot解の安定性に関する論文が受理された。このテーマに関しては縮約に関して間便な方法は適用出来ないので,地道に固有関数等を計算し,やっと定常スポット解からの進行スポット解のドリフト分岐のダイナミクスを導くあと一歩のところまでたどり着いた。 次の2項目は直接本研究課題と無関係なように見えるが,研究の幅を広げる意味(非局所項を特異摂動法でどう扱うか)で非常に重要である。(5)保存系の定常解の存在と安定性:これまで保存系の特異摂動解にはあまり興味が無かったが,ある研究者から質問されたことが契機となり,非局所項を特異摂動法でどのように扱うが重要なテーマとなり,ある簡単なケースに関して解の存在と安定性を証明することが出来た。(6)非局所項を持つ自己駆動体運動の反応拡散系モデルの解析:これに関しては現在まだ計算中であるが,非局所項を特異摂動法の枠組でどう扱うかが鍵となっている。本質的には空間2次元の問題であり,数値計算の結果と照合しながら解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度からの継続であるが,次の2点に関して遅れている。(1)退化度の高いBogdanov-Takens型分岐点近傍での縮約方程式の導出及び,係数決定を行うことである。その為には,更なるフロント解の持っている性質が必要になる。すなわち,進行フロント解の加速度の情報を導き出すための特異摂動法による解の展開が必要になる。そこで,新たな手法として時間変数も考慮した接合漸近展開を構築することを考えたが,空間的な接合と時間的な接合の両方を考慮しなければならず,計算量が膨大になり,現在は全体の枠組みを整理しているところである。これは全く新しい取り組みであり,新しい理論が構築できる可能性がある。(2)パルス解の安定性解析において,線形化固有値問題を解く過程において導かれた最大固有値を決定する関係式は固有値の連立非線形方程式となり,パルス解の存在条件としての関係式との関係や固有値自身の分布に関してはまだ未解決である。
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今後の研究の推進方策 |
1つ目の項目に関しては時間変数と空間変数の両方に対して接合漸近展開を適用する必要がある。これは全く新しい取り組みであり,新しい理論が構築できる可能性がある。これまで行った漸近展開による計算結果をもう一度整理し,時間と空間変数に対する接合条件を導出したい。2つ目のパルス解の安定性解析に関しては,対称モードと非対称モードの2つの摂動に関する不安定化から導かれる固有値があり,それぞれにおいて,最大固有値を決定する関係式は連立の非線形方程式となる。フロントの場合は単独の非線形方程式で決まり,かなり単純であった。分岐問題に関しては,どちらのモードの不安定化が先に出現するかが重要であり,今後数値計算も併用して前進させたいと考えている。さらに次年度は,非局所項を含む問題に対しても新しい特異摂動法の枠組みを作り,解の分岐構造及び縮約系の導出にチャレンジしたい。この部分もそれぞれの専門性をいかして,研究協力者の栄氏,小川氏と協力して行う。
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