研究課題/領域番号 |
19K03647
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
中川 尚子 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (60311586)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 大域熱力学 / 非平衡エントロピー / 準安定状態 / 熱流 / 混合自由エネルギー / Jarzynski等式 / 線形応答領域 / 一次転移 / 準安定状態の制御 / 二成分流体 / エントロピー原理 / 気液転移 / 非平衡定常状態 / ギブスパラドックス / 相加性の破れ / 混合エントロピー / 変分原理 / 浸透圧 / 引き込み転移 / エントロピー / 非平衡 / 熱力学 / 構造形成 |
研究開始時の研究の概要 |
豊かな時空間構造を生じる非平衡系に、平衡熱力学の強力な方法論を適用可能にすることを目指し、「熱伝導下にある二成分流体の非平衡自由エネルギーとソーレ効果」および「非線形振動子の集団運動を特徴付ける熱力学関数の探索」の二項目を取りあげる。数値実験による熱力学計測に基づき、前者では、熱流の存在により粒子や場に加わる有効力を非平衡自由エネルギーと結びつける試みを、後者では、過剰熱測定により決定した非平衡エントロピーを用いて、引き込み転移と秩序-無秩序転移の違いを明らかにし、振動子系の集団運動を非平衡エントロピー最大として捉える試みを行う。
|
研究成果の概要 |
熱流の影響を受けるマクロ系を記述する新しい枠組みとして「大域熱力学」を考案し、熱伝導状態に熱力学構造を拡張した。この枠組みに則った変分原理により「熱流が気液界面付近に過冷却気体を安定化する」という新現象を報告、同時に、エントロピーには熱伝導系の非相加性を表す追加項が加わることを導いた。複数の環境設定について大域熱力学の変分原理を設定し、エントロピー最大や自由エネルギー最小の状態が同じ非平衡定常状態となる熱力学等価性を確認した。また、二成分流体の混合自由エネルギーを数値実験で決定する新しい公式を導出した。アルゴン=クリプトン混合物に適用し、観測される気液転移の様子が特徴づけられることを示した。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
熱力学や統計力学は物性研究の根幹をなし、特に変分原理は平衡での構造予測を可能にする有用性の高い理論である。これらを非平衡状態に拡張する研究は100年以上にわたる歴史がある。大域熱力学は熱伝導系の全体量だけを用いる簡便な記述法だが、非自明な現象予測をもたらすことができ、数値実験による実証例も報告された(PRL, 2023)。大域熱力学が予言する「熱流による準安定状態の制御」はこれまで検討されなかった制御技術と物性開発の新しい可能性を示唆する。また、混合自由エネルギーを数値実験で決定するための新公式は、微小サイズ溶液の潜在能力を数値実験で定量化する新しい方法論を与える。
|