研究課題/領域番号 |
19K03651
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
泉田 勇輝 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (70648815)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 熱効率 / 散逸 / スターリングエンジン / 同期現象 / 低温度差スターリングエンジン / 力学系 / 分岐 / 非平衡熱力学 / 線形不可逆熱力学 / 非線形動力学 / 非平衡熱統計力学 / 線形応答理論 |
研究開始時の研究の概要 |
人の体温と室温の間のわずかな温度差で動く低温度差スターリングエンジンの力学系モデルは、エンジンを温度差によって駆動される非線形振り子として記述する。本モデルの運動方程式の解析からエンジンが回転を開始する分岐点(温度差)の近似式を求め、より低温度差で回転が可能となる条件を明らかにする。また、シミュレーション・線形応答理論によって力学系モデルをミクロな観点から基礎づける。これによりわずかな温度差から運動が自律的に生じる物理原理を解明し、力学系・非平衡物理学の発想に基づく新しい低温度差スターリングエンジン技術を創出する。
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研究実績の概要 |
昨年度投稿した熱源の温度が連続的に変化する熱機関サイクルの不可逆効率に関する論文が受理され、Physical Review Research誌から出版された。本成果ではスターリングエンジンを含む一般の有限時間(非準静的)熱機関サイクルの不可逆効率を、熱力学的長さと呼ばれる散逸の最小値に関連する量を用いて上から抑えることができることを示した。これはカルノーの定理の複数熱源・有限時間への自然な一般化になっており、理想スターリングサイクルのような等温過程を含む二温度エンジンの優位性を明らかにするとともに、今後様々な応用が期待される。
上記の仕事では熱源の温度と系のハミルトニアンに含まれるパラメータを変化させる非準静的過程を扱ったが、外部から(ピストンに)外力をかけて平衡状態を変化させる際の熱力学的応答も考えられる。この際の応答は示量的な変数(内部エネルギーや体積)であり、アインシュタインの揺らぎの公式を応用することで、非準静的な応答係数やその際の散逸を定式化した。本成果については現在論文を投稿中である(Y. Izumida, arXiv:2301.12116)。
また、二つの低温度差スターリングエンジンが結合した際の熱効率を線形不可逆熱力学によって解析し、シンクロが熱効率・仕事率に与える影響を定式化した。結合強度を変えていった際の熱効率の分岐図にはヒステリシスが現れるなど力学系の観点からも興味深い振る舞いをすることも明らかにした。現在論文を投稿中である(S. Yin, H. Kori, and Y. Izumida, arXiv:2302.11308)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度投稿した論文が受理され、また新しい研究成果として二つの論文を投稿することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究の総仕上げとなる年度のため、線形応答理論と力学系理論の観点から低温度差スターリングエンジンの物理を整理するとともに、投稿中の論文の受理も目指す。
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