研究課題/領域番号 |
19K03711
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
栗田 伸之 東京工業大学, 理学院, 助教 (80566737)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 量子スピン液体 / キタエフ模型 / 磁場誘起量子相 / 純良単結晶育成 / ルテニウム化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、蜂の巣格子量子磁性体α-RuCl3における磁場誘起量子相の相転移近傍での臨界現象を明らかにすることである。純良単結晶を用いた磁化・比熱・電子スピン共鳴測定等を行い、温度-磁場相図および周波数-磁場ダイアグラムを低温・低周波数領域まで決定する。特に①反強磁性秩序相が消失する臨界磁場Hcでの相転移は量子相転移か否か、②Hc近傍における励起ギャップの有無、③低エネルギー励起の起源、は本物質で観測されたスピン液体的振る舞いを理解する上で重要な知見となる。積層欠陥の影響を最小限に抑えた純良単結晶の育成やゼロ磁場でのスピン液体の実現を目指した関連物質の開拓も本研究の重要課題である。
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研究実績の概要 |
有効スピン1/2を持つ蜂の巣格子量子磁性体α-RuCl3はキタエフ型の量子スピン液体を実現する有力な候補物質である。本研究の目的は、α-RuCl3においてマヨラナ粒子の実験的証拠となる熱ホール伝導度の半整数量子化が観測された磁場誘起量子相近傍での臨界現象を明らかにすることである。これまでの研究からこのマヨラナ粒子の挙動を観測するには積層欠陥等を最小限に抑えた結晶性の良い試料が必要不可欠であることが分かっている。従って純良な単結晶試料の育成方法を確立することも重要な課題となる。 本年度は、α-RuCl3に関する共同研究の成果が3つの学術雑誌(①Nat. Commun.、②Sci. Adv.、③Phys. Rev. X)に掲載された。①では、蜂の巣格子に垂直な磁場方向に対する102 Tまでの強磁場磁化過程及びその磁場角度依存性を明らかにした。実験結果は理論計算により定量的レベルで再現され、35 Tと83 Tに量子相転移があり中間相が量子スピン液体相になっていることが明らかになった。②では、蜂の巣格子面内で磁場を変化させ比熱測定と熱ホール伝導度測定を行うことで、バルクギャップとエッジモードの符号変化の対応関係を明らかにした。これによりマヨラナフェルミオン励起のトポロジカルな性質のバルク・エッジ対応が示された。③では、高エネルギーの電子線照射により欠陥を導入したα-RuCl3単結晶の精密比熱測定を行い、欠陥がキタエフ液体におけるマヨラナ粒子の弱局在状態を誘発していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はα-RuCl3の研究成果がNature Communications、Physical Review X、及びScience Advancesにそれぞれ1報ずつ掲載された。一方、α-RuCl3の純良単結晶育成に遅れが生じているため進捗状況は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
α-RuCl3の単結晶育成について、ブリッジマン法にて得られたフィルム状の純良単結晶の小片を可能な限り多く収集し再結晶化させる方法を継続する。昨年度までに得られた測定結果を精査し、論文執筆を含む成果発表を行う。
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