研究課題/領域番号 |
19K03729
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小野田 繁樹 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (70455335)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | フラストレート磁性体 / 量子スピン液体 / 量子スピンアイス / 理論 / 界面 / 第一原理計算 |
研究開始時の研究の概要 |
量子スピン液体とは、磁性絶縁体中の巨視的な数の局在電子スピンが、最低温においても磁気秩序を示さない一方、非自明なトポロジカル秩序を実現する量子相である。このトポロジカル秩序のために、スピン量子数を分数だけ変える励起(スピノン)が基本的な励起となり、スピノンと結合するゲージ場が非閉じ込め状態となる。この量子スピン液体の表面・界面では、トポロジーが変化するために、様々な新しい現象の存在が期待される。本研究課題では、この量子スピン液体の界面での新現象について、場の量子論的手法や数値シミュレーションからその学理を構築し、第一原理計算によって界面での新現象を実験的に検証するための具体的な物質を探索する。
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研究実績の概要 |
量子スピン液体では、局在電子スピンが絶対零度でも磁気秩序が生じず、非自明な長距離トポロジカル秩序と新しいゲージ構造が発現する。本研究課題では、この量子スピン液体の表面・界面でのトポロジー変化から期待される新しい現象の理論的研究や、その舞台となる候補物質の理論探索を推進してきた。 前年度から、高温量子スピンアイス候補物質であるスピネル型イリジウム酸化物Ir2O4とその関連バンド絶縁体物質の超構造系に対し、OPENMXパッケージを用いて、密度汎関数法に基づく大規模第一原理分子動力学シミュレーションを行って来た。しかし、その精度・収束度合いの向上が課題となっていた。当該年度では付加的計算を遂行することによってこの課題を克服することに成功し、構造最適化計算を完遂した。この超構造系の格子定数は、モット絶縁体であるIr2O4の格子定数と関連バンド絶縁体の格子定数とから単純に見積もられる値よりも大きいことが分かった。また、不対電子はIr2O4層のIr原子あたり1電子と見積もられ、Ir2O4系と変わらないことが分かった。モット転移や磁性を評価するために必要な局所クーロン斥力の効果をLDA+Uの枠組みで計算するための準備的計算を行った。 磁気双極子自由度と電気四重極子自由度の両方に対する乱雑位相近似に基づいて、量子スピンアイス系Tb2Ti2O7の超音波測定の実験結果を定量的に説明する理論に関して、前年度に理論計算をほぼ完了させ、論文執筆に入っていた。当該年度においてその論文投稿準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Ir2O4関連超格子系の大規模第一原理計算による構造安定化の計算に想定以上の計算量を要したことから、オンサイト電子間クーロン斥力を考慮したモット転移・磁性の計算が次年度の課題として残されているため。
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今後の研究の推進方策 |
Ir2O4超構造系に対し、OPENMXを用いてLDA+U法に基づいたモット転移・磁性の大規模第一原理計算を遂行する。理研スーパーコンピューターHOKUSAIを用いた課金による優先実行により、迅速化を図る。その結果からIr磁気モーメント間の相互作用を求め、ゲージ理論と照合してU(1)量子スピン液体相の実現可能性を探求する。 Tb2TI2O7の超音波測定の実験結果を説明する理論の論文を出版する。
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