研究課題
基盤研究(C)
フラットバンド模型は魅力的な理論模型で、強磁性、超伝導、量子ホール効果などの面白い物性が出ることが予言されています。本研究では代表者が発見した指導原理を用いて、フラットバンドを近似的に有する化合物の候補をまず選び出します。その候補物質についての第一原理計算を行い、実際にフラットバンドが近似的に出現するかどうかを確かめます。有望な化合物についてはさらなる理論解析を進め、さらに結晶合成を行います。結晶合成に成功したら光電子分光などの物性測定を行い、理論にフィードバックをかけます。このサイクルを回すことで効率的なフラットバンド化合物の探索を行います。
パイロクロア化合物において、価電子帯最上部がフラットバンド(FB)になるような物質の設計指針を構築できた。その指針に基づき、10種ほどの化合物でFBを持つことを第一原理計算により示した。これらの化合物は適切なドーピングにより強磁性を示すことを理論的に導いた。また、有効スピン軌道相互作用の符号が物質ごとに変わることから、トポロジカルな性質をチューニングできることも示した。さらに、2つのFBからなる物質Pb2Sb2O7を提案した。この物質では電子の一部が2つ目のFBに移動することにより、自然にホールドープが起こる(セルフドーピング)。その結果、元素置換せずにFB強磁性が実現することを計算で示した。
フラットバンド(FB)を持つ模型では完全強磁性、超伝導、分数量子ホール効果などの特異な物性が出現すると期待されており、現実の物質でこの模型に近い電子状態を実現することは重要な課題であった。我々は上記の研究により、一連のパイロクロア酸化物においてこのような電子状態が実現していることを示した。特異な物性の典型例として、磁性元素を含まない、FB由来の強磁性状態が出現することを示した。この研究成果はFB物質の学理を追求する一助となるるとともに、応用的にもFB物質がスピントロニクスや量子計算などの新しいプラットフォームとなる可能性を示したところに意義があると考える。
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