研究課題/領域番号 |
19K03752
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
楠瀬 博明 明治大学, 理工学部, 専任教授 (00292201)
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研究分担者 |
速水 賢 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (20776546)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 拡張多極子 / スピン軌道物性 / 完全基底 / 交差相関応答 / 機械学習 / 異常ホール効果 / 多極子 / 奇パリティ多極子 / 創発スピン軌道相互作用 / トロイダル秩序 / 電流磁気応答 / スピン軌道相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
固体結晶中の多様な秩序を電子多極子の秩序として整理することにより、交差相関物性の理解が大きく進展してきた。本研究は、従来とは逆にスピン軌道相互作用が弱い物質群を対象として、多極子の秩序が有効的なスピン軌道相互作用を創出する機構と、それによって産み出される新しいスピン軌道物性を開拓することである。(I) 映進や螺旋対称性を有する系の磁気的秩序によって生じる有効的なスピン軌道相互作用の発現機構の解明、(II) 創発的なスピン軌道相互作用による新しい型のスピン軌道物性(対称スピン分裂、縦スピン流など)の予測、(III) 電気的秩序による類似の創発現象の探索、を柱とした理論的な研究を行う。
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研究実績の概要 |
固体結晶中の多様な電子自由度を多極子の自由度を用いて整理することで、交差相関物性を系統的に理解する試みにおいて、電子系のハミルトニアンを多極子基底で展開する一般的手法を開発した。また、線形及び非線形応答において、その発現に必須のモデルパラメータを系統的に特定する手法を開発し、多極子基底で 表したハミルトニアンと併用して、各種物性応答の微視的起源を明らかにする一般的な処方箋を与えた。これらは既に論文として出版と投稿を済ませており、前者はJPSJのEditors' Choiceに選ばれている。これら一連の成果により、電子ハミルトニアンを多極子基底をビルディングブロックとして構築する方法論が確立し、スピン軌道物性を示す物質の微視的な視点からの系統的な解析と予測が可能になった。 上記のアルゴリズムに基づき、固体結晶や分子のモデルハミルトニアンを自動生成するPythonライブラリを開発し、整備を行った。また、生成された基底や結晶構造を対称操作に基づき視覚化するアプリケーションも開発した。このようなソフトウェアの開発と並行して、カイラリティと電気トロイダル単極子との対応関係、カイラル結晶系のフォノン分散と電気トロイダル単極子との関係、電気トロイダル双極子秩序下における回転子応答などについて明らかにした。カイラル物質の音響フォノン分散は右偏向と左偏向で音速は一致し、分散の分裂は波数の3次以上の高次項から生じること、光学モードの左右分裂は擬スカラー量により特徴づけられることを明らかにした。また、電気トロイダル双極子秩序の特性を解明し、これを利用した縦応答のスピン流生成方法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電子自由度を完全基底で表す一般的な計算コードと視覚化アプリケーションが完成したほか、電気トロイダル双極子秩序における回転子応答やカイラルフォノン分散の多極子による理解など、新しい固体物性の解明に波及した点は、当初の計画を上回る進展である。
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今後の研究の推進方策 |
完全基底生成パッケージおよび可視化ソフトウェアをオープンコードとして公開するほか、論文として公表する。また、フォノン系、電子格子相互作用、交換相互作用などに完全基底の方法を展開し、とくに、カイラリティと電子スピン偏極との関係などを明らかにしていく。また、固体結晶だけではなく、分子のカイラリティを微視的なスピン軌道相互作用の観点から明らかにするために、上記のパッケージを応用して、分子の微視的なモデル化を推進する。
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