研究課題/領域番号 |
19K03820
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 雅人 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (00726599)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 位相的場の理論 / 超対称場の理論 / 対称性の創発 / ホログラフィー / トポロジカル相 / 超対称性 / 局所化 / 場の理論 / 対称性 / 創発 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、「研究の目的」欄において提起された問いに対する答えの手がかりを得ることを目指す.特に場の理論において対称性(例えば超対称性)が創発する現象を,具体例の構成および一般論の探究により系統的に研究し,そのパターンを探る.この際,著者自身が長年研究してきた解析的・数値的なツール(例えば超対称局所化,共形ブートストラップ,超弦理論からの実現,ホログラフィーなど)を組み合わせて場の理論に応用することで定量的かつ精緻な議論が可能になる.
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研究実績の概要 |
これまでの研究においては,3次元N=4の超対称性を持つ場の理論のうち,特にランクか0である理論から出発すれば,ユニタリーではない位相的場の理論が得られるという成果をJHEPに発表した.しかし,そもそもなぜ位相的場の理論が得られるかについては謎なところも多かった.一般に超対称場の理論から位相的場の理論が得られるときにはしばしば位相的なツイストという操作を経ることかが多いので,我々の昨年度の成果を超対称場の理論のツイストの一種として理解できないかと問うことは自然である. 特に,我々が議論したランク0の場の理論は4次元N=4の超対称性をもつ場の理論の境界に現れる理論であることが筆者らの2011年の論文によって示されているので,4次元N=4理論のツイスト,またその境界を考えることは自然てである. 近年,4次元N=4理論の境界の境界から無限次元代数が現れることが示されており,2019年の筆者とWei Li氏の論文では対応する代数(箙ヤンギアン)が同定された.従って,箙ヤンギアンそのものについて研究することは本研究の文脈でも重要である. そこで昨年度に続き本年度は箙ヤンギアンの研究を進め,超対称場の理論と位相的場の理論の関係として昔から知られているゲージ・ベーテ対応が箙ゲージ理論の場合に成り立つかどうかを系統的に調べた.まず,カイラルではない箙(矢印とその逆向きがある箙)の場合にはゲージ・ベーテ対応が成り立つことを示した.次に,カイラルな箙の場合には(ある仮定のもとで)ゲージ・ベーテ対応が成り立たないことを示した.特に,後者の否定的結果はこれまで多くの研究者が予想していなかったことであり,ゲージ・ベーテ対応の歴史に残る成果になったと自負している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究の成果によって,当初計画には含めていなかった箙ヤンギアンの研究について大きな進展があり,特に箙ヤンギアンの表現論については結晶の融解模型の立場から決定的な結果が得られた.またさらに箙ヤンギアンかどのような幾何から現れるのかについても,箙から定まる量子力学の立場から理解が進んだ.さらに,それらの成果をこれまで信じられていた超対称ゲージ理論と可積分系模型の対応(ゲージ・ベーテ対応)に応用し,ある一定の条件のもとでゲージ・ベーテ対応の主張が成り立たないことを数学的に示した.ゲージ・ベーテ対応はNekrasovとShatashviliによる2008年以来盛んに研究されてきており,関連論文は500を超えるが,これまでの論文はゲージ・ベーテ対応を確認・導出するにとどまっており,ゲージ・ベーテ対応が成り立たないことを具体的な代数を用い正確な証明により示したのは世界でも初であり,大きな注目を集めている.また,既に研究の問題意識は単に超対称性の創発という問題を超え,より一般の対称性の創発を議論する方向へと拡大を見せている. また,昨年度の論文で議論した位相的場の理論そのものについても最新のホログラフィーの成果を取り入れた論文をカブリIPMUのポスドクらと共に発表しており,現在ホログラフィーにおける創発する対称性について研究を進めている.このように,当初計画を大きく越えた成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では,場の理論において対称性の創発現象を議論することを主たる目的として研究を進めてきたが,上でも述べた通り,現在研究はさらにホログラフィーや重力理論における対称性の創発現象の理解へとさらに広げられた.重力を含む理論において対称性がいかにして創発するかは,一般に大域対称性が量子重力において禁止されていると信じられていることと関連して,またダークマターの安定性などの現象論的現象とも関連してもとても重要な問題である.そこで,今後の研究では,場の理論ばかりではなく,対応する重力理論をも考えることで,創発する対称性の問題に迫っていきたい.このトピックについては既に筆者らは2021年に関係した論文を発表済みであるが,今後はその研究をもとに創発する対称性の問題を議論しておく.また,別の方向性として,筆者らが2021年に発見した超対称場の理論と位相的場の理論との関係をさらに深めていくことも計画している.筆者らがこれまで研究してきた3次元N=4理論にトポロジカル・ツイストという操作を施すと位相的場の理論が構成されるが,この位相的場の理論自体がまだあまり研究されておらず興味深い対象である.また,こうして構成された位相的場の理論が,これまで筆者らにより同じ3次元N=4理論に付随して研究されてきた位相的場の理論とどのような,関係にあるかを詳しく調べていく予定である.この方向性については,筆者と複数の博士研究員により日常的な議論が進んでおり,既に予備的な結果が得られている.
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