研究課題/領域番号 |
19K03822
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊藤 克美 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (50242392)
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研究分担者 |
五十嵐 尤二 新潟大学, 人文社会科学系, 名誉教授 (50151262)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 汎関数くりこみ群 / 厳密くりこみ群 / 量子マスター方程式 / ゲージ対称性 / 非摂動くりこみ群 / 場の量子論 / 数値計算 / BRST cohomology |
研究開始時の研究の概要 |
理論物理学における普遍的言語である場の量子論は,Wilson の仕事によって,くりこみ群を用いて理解することができるようになり,摂動論によらずに考察することができるものとなった.90年代の半ばに,Wilson の考えを経路積分を用いて実現し,場の理論の非摂動論的扱いを目指して実際的な計算方法を開発する研究が開始された.すでに分野を問わず多くの問題に適用されている.この手法の大きな弱点の一つはゲージ対称性と相性の悪いことである.本研究ではこの問題を取り扱う:ゲージ対称性の要求を表すワード・高橋恒等式とフロー方程式との整合性を,摂動論,数値計算などを通じて行い,ゲージ論を扱う方法を探る.
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研究実績の概要 |
運動量切断を導入した経路積分から,場の理論の構成を行うのが汎関数くりこみ群(あるいは厳密くりこみ群)の手法である.ところが,この手法では,自然界における基本的な対称性であるゲージ対称性の扱いが難しくなる.運動量切断のもたらす非局所性が,局所的な対称性であるゲージ対称性と相性が良くないためである.実は,汎関数くりこみ群におけるゲージ対称性は変形を受けながら維持される.変形されたゲージ対称性の存在は,量子マスター方程式の成立によって保証される.従って,我々の課題は,汎関数くりこみ群のフロー(流れ)方程式と量子マスター方程式を同時に満たす作用を構成することとなる. この課題は,摂動論の範囲で,解明することができた(Yang-Mills理論について 2019年に伊藤・五十嵐・モリスで書いた論文,および2021年に伊藤・五十嵐で4体フェルミ相互作用を含むQEDに関する論文).このときの作用の構成において,量子マスター方程式の持つ代数的構造が強力な道具となった. 2022年度はこれらの仕事を非摂動的な議論に拡張する可能性を検討するため,我々が扱って来た4体フェルミ相互作用を含むQEDの系について考察した.2021年の論文で量子補正を入れた作用について量子マスター方程式の成立を摂動的に証明した.このときに用いた代数的関係式が,ゲージ場の2点関数のついての高次補正があっても成立することを理解したのが2022年度の成果である.これは,ゲージ場の2点関数に関する限り,非摂動的効果を取り込んだ数値計算に意味付けを与えるものである.この点についての理解の深化があり,2022年度に用意していた論文の改訂作業を現在行なっている..
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は汎関数くりこみ群のフローと量子マスター方程式を(近似的に)満たす作用の構成方法を探ることである.量子マスター方程式の持つ代数的構造(BRST cohomology)を使って作用を構成する試みは,QEDについて一定の方向性が見えており,数値計算との整合性のある方法にもなっている. 新型コロナの影響で,国内外での研究会への出席を抑えて来ており,数年間,予算の予定通りの執行ができずに推移して来ている.これが主因で進捗状況を「やや遅れている」とした.
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,QEDについては,少なくともゲージ場の2体部分について非摂動的補正も許す作用の構成法を理解した.このように用意した作用(Ansatz)を用いて,汎関数くりこみ群のフロー方程式を数値的に解くことができ,それは必然的に非摂動的効果を取り込んだものとなる.2022年度に得たこの理解は,量子マスター方程式を尊重した作用(Ansatz)の構成とそれについての非摂動的な数値計算という本研究の目的に沿った重要な進展である.以前から試みている数値計算の方法を正当化するものでもあり,これらの成果について現在論文を執筆中である. 以上の進展は,量子マスター方程式の代数的構造を利用した作用(Ansatz)の構成を行った,という方法になっており,この方向で,さらに,フェルミオン2体・相互作用への量子補正を作用のAnsatzとしてどう導入すべきか検討している.また,高次の量子補正についても考察を始めている.この方向で作用のAnsatzが改善されると,新たな数値計算の必要が出てくる. また,上述の成果がQED特有のものであるのか,Yang-Millsなどにも拡張できるのかも今後の重要な課題である.
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