研究課題/領域番号 |
19K03823
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
前川 展祐 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (40273429)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 大統一理論 / 宇宙紐 / 対称性の破れ / ニュートリノ質量 / 非位相弦 / 重力波 / 超対称性 / 余次元 / ゲージ結合定数の統一 / 超対称性の破れ / 小林益川行列 / 自発的対称性の破れ / 異常U(1) |
研究開始時の研究の概要 |
自然な大統一理論は対称性で許されるすべての項をO(1)係数で導入するという自然な仮定の下で超対称大統一理論における様々な問題を非自明に解決する有望な理論である。興味深いことは、自然な大統一理論からたった一つの一重項場を無くすことで超対称性を自発的に破る理論になることである。従来の超対称性の破れのシナリオの複雑さと比して、非常にシンプルなこのシナリオの現象論を議論し、現実的なシナリオを構築する。その際により現実的なシナリオを構築するためには、自然な大統一理論で行った重要な仮定を緩めることも考慮し、様々なシナリオを構築する。それらの仮定を自然に与える余次元理論の構築を行う。
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研究実績の概要 |
宇宙紐からの重力波により、標準模型を超える物理における対称性の破れの痕跡を捉えられることが指摘されているにも関わらず、宇宙紐の形成条件がそれほど明らかではない。位相弦に関しては数学的に形成条件がよくわかっているが、非位相弦については、標準模型における対称性の破れSU(2)*U(1)->U(1)以外の破れではほとんど議論されていない。今回、神田氏とともにSU(N)*U(1)->SU(N-1)*U(1)という自発的な対称性の破れにおいて古典的に安定な宇宙紐が形成される条件を明らかにした。 自然な大統一理論には、ゲージ結合定数の統一とニュートリノ質量の大きさを両立させるには、パラメータのチューニングが必要になる、という不満足な点がある。この結果は、対称性で許されるすべての項をO(1)係数で導入する、という大胆な仮定から導かれる結果である。この大胆かつ自然な仮定をあえて外すことで、この問題を解決する可能性を谷井氏とともに探った。すると、多くの可能性があることがわかり、そのうちの一つの可能性では、少々敗れている対称性を導入することで自然に実現できることがわかった。興味深いことは、この状況を自然な大統一理論で対称性を自発的に破ることで実現不可能である。つまり、自然な大統一理論の枠組みを超えた理論(例えば、余次元理論等)で実現する必要があることである。つまり、自然な大統一理論を超える物理を考えるうえで重要なヒントになりうることがわかる。また、この考えを超対称性を自発的に破るシナリオに導入すると、超対称性の破れのスケールを下げることができ、まだまだ電弱スケールよりも大きいので不自然さは残っているが、改善することが分かってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NANOGrav観測実験が重力波とも解釈できるデータを報告したことで、とりあえず、自然な大統一理論で宇宙紐が形成されるかどうかをはっきりさせるための研究を遂行した。そのためにこの科研費で提案した研究は遅れてはいるが、トータルでみると、おおむね順調に研究を進めていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
自然な大統一理論における宇宙紐の形成は、これまで研究した可能性では難しいことがわかっている。ほかの可能性についても研究していく予定である。 自然な大統一理論における自発的な超対称性の破れのシナリオにおいて、D項が支配的になることがわかってきており、もし、D項が支配的になった場合に、現象論的に満足できるシナリオが得られるかどうか、を考えていく。また、一方で、D項が支配的になる、ということがどれくらい一般的な結果であるか、について研究していきたいと思っている。一般的に成立するなら、定理としてまとめたいし、ループホールがあるなら、そのループホールを用いることで、現象論的に満足な理論を探求していくつもりである。
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