研究課題/領域番号 |
19K03851
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
北澤 敬章 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (20271158)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 弦理論における量子効果 / 質量補正 / 宇宙のインフレーション / 暖かいインフレーション / ゲージ対称性の自発的破れ / 余剰次元模型 / 宇宙背景放射 / 宇宙背教放射の偏極 / 原始重力波 / 超弦理論 / 超対称性の破れ / Dブレーン / Dブレーンの動力学 / 現理論 / ブレーン動力学 / ローレンツ対称性の破れ / 素粒子質量の起源 / 電弱対称性の自発的破れ / 弦理論 |
研究開始時の研究の概要 |
電弱対称性の自発的破れは全ての素粒子の質量の起源であり、そのメカニズムの解明は現在の素粒子物理学の最重要課題のひとつである。この問題は場の量子論や弦理論における静的な問題として研究されてきた。すなわち、電弱対称性が自発的に破れた状態が基底状態として実現されるべきであると信じられてきた。この信念のもとでの研究に発展性がないことに鑑み、電弱対称性が自発的に破れた状態は弦理論の動的平衡状態において実現されるという可能性を探求する。これにより、電弱対称性の自発的破れのメカニズムは暗黒物質の起源や宇宙のインフレーションのメカニズムと関連することになる。
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研究実績の概要 |
・素粒子の標準模型において、電弱対称性の自発的破れの動力学は未知である。これまでの場の量子論の枠内でのさまざまな努力は実を結んでおらず、それを含み、かつ超えた枠組みとしての弦理論の動力学に期待がかかる。弦理論における量子効果による質量生成について詳細な研究を行った。特に弦理論におけるスカラー場の2点関数について詳細に研究をおこなった。本来は散乱行列しか計算できない現状の弦理論の定式化においても、外線運動量を質量殻からずらした2点関数は、量子効果による質量補正を正しく与える可能性を指摘した。新しい技術として「部分モジュラー変換」をいうものを駆使して、それを示した。このようにして得られる量子効果による質量補正について、その2乗質量が負になるときに対称性の自発的破れが起きる。それが実現するための条件を見出すことが次の課題である。これは高エネルギー加速器研究機構の磯暁氏および須山孝夫氏との共同研究である。
・宇宙初期に起きたと信じられている加速度的な宇宙膨張はあるスカラー場のポテンシャルエネルギーによるものと考えられている。観測によると、そのスカラー場の時間変化は極めて緩やかで、それを実現するポテンシャルエネルギー関数の自然な実現は極めて難しい問題である。スカラー場を擬南部ゴールドストーン場であると考えてこの問題を解決するアイデアは観測によって既に排除されたと考えられているが、「暖かいインフレーション」というシナリオにおいてはまだ可能性が残されていることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究から、弦理論における対称性の自発的破れを実現するためには、弦理論の量子補正についてのより深い理解が必要であると認識した。そこで、スカラー場の質量補正に直結する2点関数に集中して、それを詳細に調べた。本来は散乱行列しか計算できない現状の弦理論の定式化においても、外線運動量を質量殻からずらした2点関数は、量子効果による質量補正を正しく与える可能性を指摘した。しかしながら、対称性の自発的破れを起こすためには2乗質量が負である状況を実現しなければならず、そのための条件を特定するところまでは達していない。
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今後の研究の推進方策 |
スカラー場の2点関数の研究をさらに進めて、スカラー場の2乗質量が量子効果によって負になるための条件を見出し、それが実現しているDブレーンの系を具体的に構成する。また、2乗質量が負になると考えて過去に自分が研究をおこなったDブレーンの系について、本研究で得られた方法を適用してもう一度研究を行う。
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