研究課題/領域番号 |
19K03856
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
酒井 一博 明治学院大学, 情報数理学部, 教授 (10439242)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 2次元重力理論 / JT重力 / E弦 / Jacobi形式 / 楕円種数 / KdV方程式 / 行列模型 / リサージェンス / 2次元Yang-Mills理論 / 位相的弦理論 / 弦理論 / 非摂動効果 |
研究開始時の研究の概要 |
摂動展開の形でのみ具体的な定式化が与えられている弦理論にとって、非摂動効果の定量的解析は長年にわたる懸案事項である。一方で、量子力学や微分方程式の理論において、摂動級数の発散の漸近的振る舞いと非摂動補正との間に関係がつく、リサージェンス構造が古くから知られている。近年の技術的進展により、低次元の場の理論や位相的弦理論においても、リサージェンスの理論を適用するに十分なだけの、高次までの摂動展開を計算することが一部可能になりつつある。本研究では、リサージェンス理論を弦理論に適用することで、Calabi-Yau多様体上の位相的弦理論の非摂動効果の精密計算手法を確立することを目指す。
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研究実績の概要 |
重力理論の量子化は素粒子理論における大きな目標のひとつである。特に、量子重力理論、あるいはこれを包含する弦理論における非摂動効果の解析は、近年活発に研究がなされている。今年度は昨年度に引き続き、近年再び脚光を浴びているJackiw-Teitelboim(JT)重力理論、およびこれを包含する一般の2次元位相的重力理論において、スペクトラル形状因子(SFF)に関する系統的研究をおこなった。 SFFは多境界分配関数の解析接続として得られ、模型がカオス的かを調べる診断に役立つほか、JT重力理論と双対なSYK模型との対応を調べる上でも有用である。JT重力理論のSFFは、一般的には種数展開の形で有限次数までしか調べることができないが、「τスケーリング極限」と呼ばれる極限においては、全種数展開を足し上げた形が求まることが最近明らかになった。 今年度の研究では、2点のSFFについて、τスケーリング極限を緩めた場合の補正項を任意の次数まで計算するアルゴリズムを開発した。また、一般のn点SFFについて、後期時間帯における関数形を系統的に計算する手法を展開し、それらが2点SFFのある種の組み合わせで表されることを明らかにした。 また本年度は、6次元E弦理論と4次元N=2超対称SU(2) N_f=4ゲージ理論との関係に関する長年のパズルを解決した。E弦理論をトーラスコンパクト化すると、5次元や4次元の階数1の超対称ゲージ理論が得られることはよく知られている。しかしながら、4次元N_f=4ゲージ理論を自然な次元還元によって得る方法は未解明であった。本研究では、N_f=4理論のもつD_4鼎対性が、E弦理論のF_4還元のツイストから自然に現れることを明らかにし、上記パズルを解決した。副産物として、D_4鼎対性不変量の楕円的拡張としてD_4_鼎対性不変なヤコビ形式を定義し、その代数の基底の具体形を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リサージェンス構造を用いて位相的弦理論の非摂動効果を調べるためには、位相的弦理論の分配関数を高次まで計算する必要がある。特に本研究では、多変数依存性を持つ位相的弦理論の調査を目的としていた。E弦理論の楕円種数の生成母関数は、局所1/2 K3上の位相的弦理論の分配関数と等価であり、まさに多変数依存性を持つ分配関数として理想的である。本年度の研究では、上記分配関数を構成する際の基底として、従来のWeyl不変E_8弱Jacobi形式と同様の非自明な性質を保ちつつ、より簡単に計算できるD_4鼎対性不変Jacobi形式を見出した。これにより、上記の位相的弦理論分配関数について、高種数にわたる分配関数の計算が一段と容易になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
過年度も含めこれまでに開発した技術を用いて、局所1/2 K3上の位相的弦理論の分配関数の高次補正計算を行い、これを元に非摂動効果を調べる。またE弦理論について、より効率的な模型として、E_8をF_4やD_4に落とした対称性を持つ場合の分配関数について、さらに研究を進める。
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