研究課題/領域番号 |
19K03858
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
佐川 弘幸 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 客員主管研究員 (50178589)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アイソスピン / ガモフ・テラー状態 / subtracted second RPA / 荷電対称性の破れ / QCD sum rule / 対相関 / 荷電同位状態 / 2重β崩壊 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、バリオン間相互作用及び原子核の構造における基本的対称性であるアイソスピン対称性を切り口に、基底状態における超流動状態のアイソスピン構造、電荷交換反応により明らかになる2重アイソスピン相似状態、2重ガモフ・テラー励起や2重スピン双極子励起状態などの新しいスピン・アイソスピン励起状態を理論的に研究する。また、その励起機構から荷電対称性非保存力(CSB)及び荷電独立性非保存力(CIB)の効果を探り、アイソスピン2重核及び3重核の精密質量測定で得られるアイソスピン非保存力の情報とも重ね合わせ、CSB、CIS力の定量的な確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、強い相互作用及び原子核構造で重要なアイソスピン対称性を切り口に、原子核中の 新しい相関を明らかにしていくことを目的としている。現在まで、アイソスピン対称性を破る力はアイソスピン相似状態(IAS) のエネルギーや原子核質量のアイソスピン2重項及び3重項の対称性からのズレで議論されている。一方、理論的にはアルゴンヌV18 相互作用やCD Bonn 相互作用等の核子-核子散乱実験から決められた現実的な2体力を用いたBruckner 型計算やChiral effective field theory でも研究されている。我々は、量子色力学(quantum chrmodynamics)和則の方法を用いて、真空中のchiral 対称性の破れが、核物質の中では部分的に回復することに起因するCharge symmetry breaking (CSB)力を導出することに成功し、free parameterのないSkyrme 型のエネルギー密度関数を提唱した。このCSB力をOkamoto-Nolen-Schffer異常に応用し、定量的にQCDの立場から新しい物理現象を解明し説明した。 また、ガモフ・テラー励起状態の理論的な取り組みとして、従来の1粒子ー1空孔状態による乱雑位相近似(random phase approxmation, RPA)模型を発展させ、1粒子ー1空孔状態に2粒子ー2空孔状態も取り入れた、subtracted second RPA (SSRPA)模型を発展させた。このSSRPA模型にテンソル相関を取り入れて、ガモフ・テラー励起状態の励起エネルギーや崩壊幅ベータ崩壊位の寿命を研究し査読付き雑誌に論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近のアイソスピン相似状態のエネルギーや、同重核の質量の精密測定から、2つのアイソスピン対称性を破る核子間相互作用の存在が定量的に明らかにされつつある。これらは陽子・陽子力と中性子・中性子力の違いからの荷電対称性非保存力(Charge Symmeyry Break-ing force, CSB) および陽子・中性子力と同種粒子間力の違いからの荷電独立性非保存力(Charge Independence Break-ing force, CIB) に分けられる。当該研究で、我々は、従来現象論的の導入されていたCSB力を量子色力学和則の方法を用いて、真空中のchiral 対称性の破れが、核物質の中では部分的に回復することに起因するCSB力を導出することに成功した。このfree parameterのないSkyrme 型のCSBエネルギー密度関数を鏡映核の結合エネルギーの差に観測されるOkamoto-Nolen-Schffer異常に応用し、定量的にQCDの立場から説明することに成功した。 また、ガモフ・テラー励起状態やベータ崩壊の理論的な取り組みとして、従来の1粒子ー1空孔状態による乱雑位相近似(RPA)模型を発展させ、1粒子ー1空孔状態に2粒子ー2空孔状態戻り入れたSSRPA模型を発展させた。このSSRPA模型にテンソル相関を取り入れて、アイソスピンに依存するガモフ・テラー励起状態の励起エネルギーや崩壊幅、ベータ崩壊を研究しその理論的は定量的理解を大きく前進させた。これらの結果は、世界的に評価の高い専門誌に査読付き論文として発表されている。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、従来現象論的の導入されていたCSB力を量子色力学和則の方法を用いて、真空中のchiral 対称性の破れが、核物質の中では部分的に回復することに起因するCSB力を導出することに成功した。この量子色力学和則の方法をさらに発展させ、荷電独立性非保存力を検討していく。そのためには、パイ中間子の核物質中の振る舞いを QCDの立場から検討する必要がある。量子色力学和則の方法で2つのアイソスピン対称性を破る力を導出することにより、中重核以上の中性子数と陽子数が大きく違く原子核での アイソスピン対称性を検討する枠組みができることになる。 また、我々は乱雑位相近似(RPA)模型を発展させ、1粒子ー1空孔状態に2粒子ー2空孔状態戻り入れたSSRPA模型を発展させた。この模型の延長として、対相関を取り入れた準粒子(quasi-particle)RPA模型を発展させ、2準粒子ー2準空孔状態を取り入れた、SSQRPA(subtracted second quasi-partile RPA)模型を発展させることを目指している。この模型により、応用範囲が飛躍的に広がり、核図表の多くの原子核に応用が可能になる。
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