研究課題/領域番号 |
19K03861
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
萩野 浩一 京都大学, 理学研究科, 教授 (20335293)
|
研究分担者 |
谷村 雄介 東北大学, 理学研究科, 助教 (90804310)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 核融合反応 / 核分裂 / 量子トンネル現象 / 多体問題 / 集団運動 / 微視的反応理論 / クラスター崩壊 / 生成座標法 / 微視的核反応理論 / 超重元素 |
研究開始時の研究の概要 |
原子核反応理論における大きな目標は、核子の自由度を用いて微視的に原子核反応を記述し、その量子多体ダイナミックスを理解することである。しかしながら、量子トンネル現象が重要となる低エネルギー領域の原子核反応に対し、そのような微視的核反応理論はこれまで全く存在してこなかった。本研究では、低エネルギー領域に適用可能な微視的反応理論を新たに構築し、量子トンネル現象が本質的な役割を果たす重イオン核融合反応及び核分裂にその理論を適用する。これにより、低エネルギー原子核反応の量子多体ダイナミックスを明らかにし、超重元素生成反応、天体核反応、核分裂、化学反応などに対する大きな展望を開く。
|
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、時間に依存する生成座標法(TDGCM)の考えに基づいて複数のスレーター行列式を重ね合わせることにより、多粒子系の量子力学的トンネル現象を微視的に記述できるか検討を行った。これまでに、1次元系及び3次元系の両方の場合で、この研究で開発している手法を用いて有限のポテンシャル透過確率を得ることに成功している。この結果が、この手法で考えている波動関数に内在する高運動量成分のためだけではないことを示すために、1次元障壁の問題に対してTDGCMとエネルギー射影法を組み合わせた解析を行った。それにより、エネルギー射影を施した後でも、障壁以下のエネルギーに対してトンネル確率が有限になることを見出した。これは、この手法が高運動量成分が障壁を超えているという単純な解釈以上の量子効果を取り入れられていることを示す結果になっている。 また、本研究で開発した研究手法を静的な核構造の問題へ適用する研究も行った。これは、時間に依存する生成座標法と同様に、重ね合わせるスレーター行列式及び重み関数の両者を最適化し、よりよい基底状態を求めるアプローチである。これは、時間に依存する生成座標法において虚時間発展により基底状態を求めることに相当する。28Si 核及び 12C 核に対し、Volkov 相互作用及び Skyrme 相互作用を用いた計算を行い、基底状態に対する収束解を得ることに成功した。Skyrme 相互作用に関しては、密度依存項の取り扱いに注意が必要であることも併せて見出した。現在、得られた解の分析を進めているところである。 関連課題として、生成座標法+殻模型的手法を用いた誘起核分裂の微視的理論の開発及び共役運動量を取り入れた生成座標法の研究も継続中である。前者に関しては、Skyrme 相互作用を用いた半現実的な計算に着手した。後者に関しては、対相関相互作用を取り入れた拡張に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
時間に依存する生成座標法とエネルギー射影を組み合わせる計算は、準備的な計算を終えることができたが、本格的な計算に向けて検討すべき課題がまだ多い。その中でも、エネルギーの関数としてスムーズな透過確率がまだ得られておらず、その検討がまだ手つかずな課題として残っている。また、本手法を用いて基底状態の構造を記述する研究も、Skyrme 相互作用に起因する技術的な問題の解決にやや手間取り、準備的な計算が終わった段階である。両者とも、今年度はより一層進めるようにしたい。
|
今後の研究の推進方策 |
時間に依存する生成座標法の研究では、エネルギー射影法の計算に関する一定の成果があったが、得られたトンネル確率が滑らかな関数にならないという問題が発生している。今年度は、この原因を探り、滑らかな関数を得るための検討を行う。具体的には、スレーター行列式の数に対する依存性や、ポテンシャル障壁の高さや形に対する依存性を調べる。 本研究で開発した手法を静的な核構造の問題へ適用する課題に関しては、得られた波動関数を詳細に調べ、従来の生成座標法との比較を行う。我々の手法では重ね合わせるスレーター行列式も最適化するので、従来の生成座標法で用いられていた仮定の妥当性をチェックし原子核の集団運動を記述する最適な集団座標を議論することができる。また、生成座標法でしばしば現れる過完全性の問題がこの手法でどのように現れるか分析し、それを回避する手法の開発を行う。 誘起核分裂の計算に関しては、引き続き計算手法の開発を行い、確率の流れ(フラックス)の観点から、有限温度における障壁透過の問題にしばしば用いられる遷移状態理論の妥当性を議論する。
|