研究課題/領域番号 |
19K03864
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
須山 輝明 東京工業大学, 理学院, 准教授 (20456198)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 原始ブラックホール / 原始密度揺らぎ |
研究開始時の研究の概要 |
米国のLIGO重力波検出器によるブラックホール連星の発見(2015年)以降、それらのブラックホールの起源を解明することが宇宙物理学の課題となっている。LIGOによる発表直後に、本研究遂行者は「LIGOで見つかった重力波は、原始ブラックホール連星の合体から生じたもので説明できる」というシナリオを提唱した。そこで、本研究では、将来連星ブラックホールの自転速度分布も観測的に確立することを見据え、この観測量に着目し、「BHの自転速度分布が、どの程度原始BHシナリオの検証に有効かを解明する」ことを目指す。
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研究実績の概要 |
連星ブラックホール合体の統計的性質に基づいて、重力波観測から原始ブラックホールを検証するための方法論を構築した。仮に宇宙に原始ブラックホールが実在したとしても、これまでに或いは今後見つかる連星ブラックホールが全て原始ブラックホールである必然性はなく、恒星起源のブラックホールの寄与も期待されることを踏まえ、一つの連星ブラックホールチャンネルが観測される合体事象を占めているか、それとも複数のチャンネルが同程度に寄与しているかを、ブラックホールの質量関数形をさらに仮定することなしに、識別する仮説検定の定式化を行なった。そして、原始ブラックホールで予言される連星ブラックホール合体率に基づいてブラックホール連星合体の疑似データを作り、それに対して導いた定式化を適用し、合体の観測数が十分大きければ、この方法によって原始ブラックホールを重力波観測から検証可能なことを示した。その後、LIGO-VirgoのO3観測による連星ブラックホール合体の実データに対して、今回導いた統計方法を適用した。今のデータに対しては、干渉計の感度に起因するselection biasの影響が大きく効いてしまい、これまでに見つかっている連星ブラックホールが原始ブラックホールかどうかを判定するほどの統計精度は得られなかった。そして、この成果を査読付き学術誌にて発表した。また、Subaru High-z Exploration of Low-Luminosity Quasarプロジェクトによって 宇宙高赤方偏移で見つかっている超巨大ブラックホールの実データからブラックホールの角度相関関数を導き、その観測結果を前年度に導いたインフレーションモデルにおける原始ブラックホールの二点相関関数と比較した。そして、超巨大ブラックホールが原始ブラックホールである可能性が厳しく制限されることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原始ブラックホールを検証するための統計手法の定式化を完成させることができ、それらと重力波観測やクェーサ観測の実データと比較することで原始ブラックホールを実際に検証することができたことから、原始ブラックホールを検証する研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究において、原始ブラックホールを重力波観測から検証するのにselection biasが無視できない影響を与えることが分かった。今年度は、LVK CollaborationのO4観測が始まる予定であり、多数の連星ブラックホールが見つかると期待されている。観測数が増えるとselection biasの効果は薄まるので、前年度O3データに対して行った方法をO4データに対して同様に行い、原始ブラックホールの存在可能性に関する結論が前年度に比べてどの程度強まるかを明らかにする予定である。
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