研究課題/領域番号 |
19K03871
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 立教大学 (2021-2022) 京都大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
石井 貴昭 立教大学, 理学部, 助教 (70837666)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ブラックホール / ゲージ重力対応 / AdS/CFT対応 / ホログラフィックQCD |
研究開始時の研究の概要 |
超弦理論の発展においてゲージ重力対応という概念が発見され、その概念に基づく理解では重力理論における種々のブラックホール解がゲージ理論の異なる相について対応する記述を与える。とりわけその重力理論では場の効果を取り入れることで拡張され多様な性質を持つようになったブラックホールが現れる。本研究では、この方向性において新しい種類のブラックホール解を構成し応用することで、重力理論の見地からゲージ理論における新しい相や状態を探索しその相構造を調べる。
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研究実績の概要 |
AdS時空に外部から摂動を一般的に与えたとき、超放射現象によってブラックホールからエネルギーをどれだけ引き抜けるかについての論文を発表した。超放射条件を満たす摂動を外部から与えたとき、ブラックホールの電荷や角運動量がエネルギーに転化されて、注入した摂動以上のエネルギーを取り出せることを定量的に評価した。 AdS時空における荷電ブラックホールついて、Robin境界条件と呼ばれる一般的な境界条件を満たす荷電スカラー場を導入した場合に得られるhairyブラックホール解に関する研究をおこない、成果を公表した。Robin境界条件をコントロールするパラメータを変数として含めたときの相構造について、異なる解の間の相転移を詳しく議論した。 AdS時空での研究の応用として、漸近平坦な回転ブラックストリング時空における超放射不安定性に関する研究をおこない、結果を論文で発表した。先行研究で、5次元以下のブラックストリングについて不安定性が起こることが議論されていたが、より高次元に関しては否定的な結果がいくつか知られていただけだったのに対して、本研究では6次元ブラックストリングにおいて超放射不安定性を発見した。 さらに、この不安定性によってブラックストリングが変形されることで得られる、新しいブラックストリング解を2種類構成し、それぞれ論文として発表した。これらの解は異なる対称性により特徴づけられる。一つは非定常ブラックホール解になっており、ブラックレゾネーターストリングと名付けられた。もう一つは、先行研究において低次元で構成されていた螺旋ブラックストリングと呼ばれる定常解を6次元において構成したものになっていた。これらについて、ブラックホールエントロピーなどの熱力学量や、極限的な振る舞いなどを詳細に解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度に開始して最終段階のデータ解析と論文執筆が年度を跨いでいた複数の研究については、それらの細部を仕上げて論文にまとめ上げる作業をおこなった。その段階において、解に関する新しい発見や副産物的な公式の導出などもおこない、前年度に準備されていたものに、同等に新しい結果を加えてより完成度の高い論文として完成させる運びになった。また、本年度に新たに開始した研究についても結果を論文として発表した。この過程において新しく種として創発したアイデアについて試験的な計算もおこない、いくつかの先行的な結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の研究を進めている中で得られたアイデアを進展させる研究を予定している。本年度の研究において、漸近AdS時空以外での超放射不安定性での特徴に関する理解が得られたので、それを超重力理論の模型などに応用することなどを考えている。回転ブラックホールには可能な対称性に関する数理的な定理がいくつか知られており、その定理において数理的に主張される最低限の対称性を持つ解を具体的に実現すること、などを期待している。また、AdS時空でのブラックホールの解析において副産物的な関係式が本年度の研究で得られたので、その関係式を掘り下げた考察をおこなうことを予定している。
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