研究課題/領域番号 |
19K03877
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
安井 幸則 摂南大学, 理工学部, 教授 (30191117)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | キリング・矢野対称性 / 変数分離性 / 共形キリング・矢野テンソル / ブラックホール時空 / 重力摂動 |
研究開始時の研究の概要 |
ブラックホール時空の一意性定理、時空を伝搬する粒子や波の方程式に現れる変数分離性等々、ブラックホール時空の持つ可積分な構造をキリング・矢野対称性を主役として解明していくことを目的とする。 4次元ブラックホール時空の可積分構造に関する研究は1960-1970年代に黄金期をむかえる。たとえば、チャンドラセカールのテキスト「The Mathematical Theory of Black Holes」(1983)にその成果はまとめられている。本研究では、その後の高次元重力理論の展開を踏まえ、ブラックホールの可積分理論をキリング・矢野対称性に基づき再構築する。
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研究実績の概要 |
近年のブラックホール研究は,重力波の直接観測,イベントホライズンテレスコープによるブラックホールの撮影など目覚ましい発展がある。これらの実験データを解析する数学的な道具は1970年代に整備されたものである。たとえば,Chandrasekharの"The Mathematical Theory of Black Holes"に詳細な記述がある。 今後のブラックホール研究の理論的な発展を考えるとき,関連する現代数学の知識を取り入れ,1970年代になされた理論研究を再吟味することは価値のあることだと考える。 本研究ではブラックホールの「対称性」に注目する。計量の対称性とは異なる高階のテンソル,キリング・矢野テンソルを使ってブラックホール時空を調べることが特徴である。物理の理論を構築するとき対称性が有効に働くことは,重力理論だけでなく素粒子理論,物性理論においても多くの例で実証されている。また,古典論だけでなく量子論に対しても対称性が生き残るか,破れるかという問に答えることは理論の解析に新しい視点を持ち込むという経験則がある。 本研究では前年度に引き続き,Kerr-NUT-AdS時空の重力摂動方程式の変数分離性の問題に取り組んでいる。キリング・矢野対称性は,4次元だけでなく高次元においても,方程式が変数分離する幾何学的な根拠を与えることを示すことが目標である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共形キリング・矢野対称性は任意次元のKerr-NUT-AdS時空の計量を一意的に定める。この結果は,宝利-大田-安井の共同研究(2007年)で得られた最大の成果である。特別な場合として4次元Kerr時空が含まれる。Kerr時空には一意性だけでなく,時空上の場の方程式や重力摂動方程式の変数分離性など「ミラクル」な性質が知られている。これらの性質は共形キリング・矢野対称性として自然な形で統一的に理解することができる。つまり,本研究をとおしてミラクルな性質は対称性に起因することが明らかになった。Kerr時空だけでなく一般次元のKerr-NUT-AdS時空の変数分離性についても共形キリング・矢野対称性から説明できると期待している。実際,スカラー場やディラック場,さらにマックスウェル場の変数分離性が対称性を使って示された。残る課題は重力摂動方程式の変数分離性を示すことである。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 前年度の研究を継続する。 リッチ平坦な高次元ブラックホール時空はMyers-Perryによって構成された。この解は高次元Kerr-NUT-AdS時空において宇宙項をゼロ, NUTパラメータをゼロとしたものである。対応する重力摂動方程式は,前述のKerr-NUT-AdS時空と異なり無限遠に不確定特異点が現れるため,その取り扱いは難しくなる。Myers-Perry解に対し,テンソルモードに不安定性が現れないということが全ての角運動量が揃った奇数次元の場合に示された(Kunduri-Lucietti-Reall 2006)。本研究では,彼らの解析を角運動量が部分的に揃った場合に拡張することを試みる。 (2) ブラックホール時空の重力摂動の手法を幾何学の問題に応用する。 幾何学ではコンパクトなアインシュタイン多様体が変形できるかどうかは主要な研究テーマである。これまでに行われた組織的な研究は,群の表現論的なアプローチが可能な等質空間の場合に制限されている。本研究では共形キリング・矢野対称性をもつコンパクトなアインシュタイン多様体に対応する重力摂動方程式を調べる。
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