研究課題
基盤研究(C)
火星大気中のダスト・水の観測は現在までに全球キロメートルスケールまで精緻化されているが、その理論的な検証を行えるほど全球高分解能で計算可能な火星の大気モデルは存在しない。本研究では代表者がこれまで世界をリードして進めてきた研究活動とモデル資源を土台に世界でも前例のない全球高分解能火星大気シミュレーションに挑戦し、重力波などの細かい波動の励起と伝播の検証と各種観測との比較、水蒸気やダストの精緻な循環過程の再現、また火星の気象メカニズム解明の鍵となるダストストーム発生機構へのアプローチを行う。さらに将来的な「火星の天気予報」の実現に向け、データ同化・予測システムの構築を見据えた研究活動を行う。
2018年に観測された火星の全球規模のダストストームが大気重力波の励起と伝播に与える影響について、全球約1°分解能の大気モデルによる計算から、下層大気では安定度が高まる影響で励起が弱まり、中層大気では平均風速場の変化に伴いエネルギーが強まることを示した。また大気モデルの結果は最近の観測で示された温度場・風速場の特徴的な変動に対する議論に用いられ、さらに火星表面に季節的に表出する斜面の筋模様を液体の水と仮定した場合の底からの水蒸気の拡散とその観測可能性、レゴリス層の吸湿性とその水循環過程に対する影響についてもシミュレーション研究を行い、5編の査読論文発表につなげた。
研究成果の学術的意義は、火星大気の複雑な現象を高分解能大気モデルと観測データを組み合わせて解明することにある。特に全球規模のダストストームが与える細かな波動等への様々な影響、水蒸気の挙動など、従来の観測・モデル研究から明らかにされていない気象の謎に迫り、将来火星探査で行うべき観測を提案していくことを目指す。さらには火星の気象予報の実現に向けての根幹となるダストストームの生成・発展過程の理解に関しての新たな知見を得ることにつなげる。社会的にも将来の有人火星探査において重要かつ実用的な火星天気予報システム、及びエネルギー源確保や生命維持に必要な水資源探査に協力する体制を構築する足がかりとなる。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 8件、 招待講演 1件) 備考 (5件)
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