研究課題
基盤研究(C)
海洋プレートの沈み込みは、海洋プレート内にある断層の強度が著しく低い場合にのみ起こる現象であるが、その具体的な断層弱化機構については未だによくわかっていない。本研究では、断層に沿って海水が浸透した際に起こるかんらん岩の熱水変質作用に着目する。具体的には、高温高圧下での熱水変形実験をとおして、かんらん岩の加水反応によってどのような含水鉱物が生成し、それがどの程度強度低下に寄与するのかを明らかにする。そして、地球型惑星において、どのような地質学的条件が揃えばプレートテクトニクスが発生しうるのかを検証する。
上部マントルの熱水変質作用が海洋断裂帯の強度にどのような影響を与えるのかを理解する目的で、変形DIA装置を用いて水飽和したかんらん岩ガウジの単純剪断実験を行った。実験条件は、温度500-580℃、封圧2.5 GPa、含水量4-30wt.%であった。かんらん岩ガウジの剪断強度は約0.5-1 GPaであった。かんらん石粒子には[001](010)のすべり系が卓越していた。ガウジ内にはB、R1、Y面などの蛇紋石を含む局所的な剪断帯が発達し、カタクレーシスに起因する粒径減少が顕著であった。これらの結果は、断裂帯はかんらん石の転位クリープと蛇紋石の摩擦すべりによって変形が支配されていることを示唆する。
海洋プレートの沈み込みは、惑星表層とマントルの間の物質循環をもたらすことから、地球史における大気やマントルの進化を考える上で重要なプロセスである。本研究成果は、惑星表層に海洋が存在することで、プレートが沈み込みを開始するために必要なプレート間にかかる抵抗力(差応力)に打ち勝つことができることを明らかにした。つまり、太陽系の岩石惑星の中で地球にだけプレートテクトニクスがある理由として、惑星表層に唯一水が存在することが挙げられる。
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