研究課題/領域番号 |
19K04100
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
岡根 正樹 富山高等専門学校, その他部局等, 教授 (90262500)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | FSW / 異種金属接合体 / 疲労強度特性 / ADC12 / デジタル画像相関法 / 自然時効 / 摩擦攪拌接合 / 鉄鋼材料 / アルミニウム合金 / 摩擦攪拌 / 疲労特性 / 疲労破壊過程 / 疲労強度 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らは,これまで,摩擦攪拌接合(FSW)による,鉄鋼材料/Al合金異種金属接合体の基本的な疲労特性を検討し,負荷レベルに依存して疲労破壊形態が変化することや,疲労特有の破壊形態を呈すること等を明らかにした.しかしながら,それらが発現する原因は未だ不明である.本接合材の場合,疲労破壊の発生箇所は,FSW特有の複雑な組織内である.したがって,疲労強度特性を明らかにするためには,その組織内で進行する疲労破壊のメカニズムを明らかにする必要がある.本研究は,本接合体における疲労破壊のメカニズムを明らかにし,より高強度で信頼性の高い異種金属接合体を創製するための最適接合条件の構築への寄与を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究は,マルチマテリアル構造を視野に入れた,摩擦攪拌接合(FSW)による異種金属接合材の疲労強度特性を検討する研究の一環として,疲労破壊のメカニズムを明らかにし,より高強度で信頼性の高い異種金属接合体を創製するための最適接合条件の構築に寄与することを目指すものである。2022年度は,前年度に引き続き,①ADC12とS45C接合体の疲労特性の検討を行った。また,②デジタル画像相関法(DIC)を用いて,S45C/A6063接合体の,応力負荷にともなう変形の分布のようすを計測した。 ①については,前年度までの研究で,ADC12の母材部では針状のケイ素(Si)が分散していたが,接合領域(攪拌部)では,Siが細かく砕かれ,粒状に分散していることが明らかとなっている。この接合体より疲労試験片を機械加工し,応力比R=-1ならびにR=0.1の条件で疲労試験を行った。その結果,接合材の疲労強度はR=-1の場合は117MPa程度で,R=0.1の場合は72MPa程度であった。ADC12母材の疲労強度と比べると,R=-1の場合は15%程度の低下であったが,R=0.1の場合は,母材部の強度と,ほぼ同程度ということがわかった。また,いずれの応力比でも,疲労破壊の発生位置は,接合時におけるADC12内の攪拌部と母材部の境界近傍,もしくは母材部内であった。 ②の検討では,S45C/A6063試験片に静的な荷重を負荷しながら,変形のようすをデジタル画像相関法を用いて計測した。その結果,A6063内の軟化領域では,軟化の程度,すなわち硬さに違いがあっても,弾性変形状態においては,応力とひずみの関係には,ほとんど差違が認められないことがわかった。一方,塑性変形状態での変形については,軟化の程度が大きな領域,すなわち硬さが低い領域ほど,塑性変形が始まる応力レベルが低いこと,すなわち耐力が低いことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,摩擦攪拌接合による異種金属接合材の疲労強度特性を検討する研究の一環として,疲労破壊のメカニズムを明らかにすることを目指している。 2022年度までに,摩擦撹拌接合(FSW)による,S45C/A6063接合体,S45C/ADC12接合体について,基本的な疲労強度特性を把握するための,完全両振り(R=-1),片振り(R=0.1)の疲労試験がほぼ完了している。また,軟化領域が形成されるA6063内では,自然時効の影響で,硬度が時間とともに変化することを明らかにしたり,デジタル画像相関法を用いて,静的負荷にともなう試験片変形のようすをリアルタイムで計測しており,概ね順調に進捗している。 一方で,S45C/ADC12接合体の場合には,攪拌領域内で,Si粒子が細かく砕かれて分散し,疲労強度特性,特に破壊の状態に,影響をおよぼすこと等,当初想定していなかった新たな知見が得られつつある。また,接合部近傍の局所的な構成関係(応力-ひずみ関係)分布の計測に関しては,想定以上に時間を要しており,このような観点から,1年間の延長を申請した次第である。このような状況から,総合的な評価として,当初の予定よりも,やや遅れていると判断するものである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでも述べたように,本研究は,摩擦攪拌接合による異種金属接合材の疲労強度特性を検討する研究の一環として,疲労破壊のメカニズムを明らかにすることを目指しており,この方針に大きな変更はない。1年延長した2023年度は,これまでの検討結果に基づき,①攪拌領域を拡張したS45C/ADC12接合材の基本的な疲労強度特性,②S45C/A6063接合体の自然時効にともなう,強度特性の変化に関する検討,を中心に行い,助成期間中の研究成果の総括を行う予定である。 ①の検討では,ADC12内の攪拌領域内で,Si粒子が微細な粒状に変化し,疲労破壊が母材部と攪拌部の境界で生じる結果を受け,攪拌領域を拡張したS45C/ADC12接合体を作製し,これの疲労試験を行い,疲労破壊のメカニズムを検討することで,強度と,Si粒子形状の相関を明らかにする。既に,予備的な検討は開始しているが,接合後に攪拌領域を拡張する手法では,場合によっては,接合界面の化合物層が異常成長することが確認されていることから,接合工程と攪拌流域拡張工程の手順の最適化について,検討を進めている。 ②の検討では,2021年度の検討で明らかにした,S45C/A6063の自然時効の影響について,それにともなう強度特性の変化について検討する。具体的には,接合加工後,一定期間保管した試験片,すなわち自然時効の影響で硬度分布に変化が生じている試験片の,引張試験や疲労試験を実施する。その際,2022年度の検討で用いたデジタル画像相関法によるひずみ計測を併用する。また,ナノインデンターによる接合部近傍の局所的な構成関係(応力-ひずみ関係)分布の計測も行い,最終的に,全体を総括する予定である。
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