研究課題/領域番号 |
19K04514
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
下村 哲 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (30201560)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | ガリウムひ素ビスマス / 長波長帯面発光レーザ / 偏光安定化 / 量子井戸 / 光変調反射分光スペクトル / 基板温度制御 / サーモグラフィ / 面内基板温度分布 / 温度急冷ステージの設計 / 基板ホルダー温度分布 / 基板ホルダー冷却速度 / GaAsBi/GaAs 量子井戸 / (221)B GaAs 基板 / GaAsBi / 半導体レーザ / 偏光異方性利得 / 光デバイス / 面発光レーザー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、赤外線領域とくにO-bandと呼ばれる波長域(1260-1360 nm)の光を発する面発光レーザの作製を目指します。この波長域の光はプラスチックを透過し、この面発光レーザの作製に成功すれば肉眼では見えないプラスチック内の金属などの異物の3次元形状をプラスチックを取り去ることなく調べることができるようになります。面発光レーザの心臓部に用いるのは新半導体GaAsBiです。GaAsBiは、長波長発光材料として優れているだけでなく、異方的な利得スペクトルを持ちます。この特性を利用すれば面発光レーザの偏光を安定化することができ、精度の高い3次元形状計測が可能になると期待されています。
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研究実績の概要 |
2023年度 研究実績の概要 【①光学的品質と偏光特性を維持しつつBi組成の増加】350℃域で成長したガリウムひ素ビスマス(GaAsBi)量子井戸層は、1.0~1.2 μm帯で発光し、発光効率が高く、強い偏光を示す。これを用いれば特別なプロセスなしに偏光安定化した長波長面発光レーザを実現でき、格段に性能を上げることができる。長波長面発光レーザ構造を成長するには多層膜層による反射率変化のない波長領域の赤外線で基板温度を測定する必要があり7.5~14 μm帯の赤外線を利用したサーモグラフィによる温度測定が最適な方法のひとつである。しかし実施例がない。2022年度に作製した焦点距離50 mm、直径40 mmの7.5-14 μmの赤外線用凸レンズを収める超高真空フランジを設計し製作した。焦点距離25 mm、直径9.5 mmの赤外線用凹レンズを自作し望遠レンズを構成した。望遠レンズを通したサーモグラフィの面内温度分布像では1.35倍の倍率で観察でき放射率を0.19に設定すれば実際の基板温度に対応することがわかった。 【②偏光が生じる機構の解明】GaAsBi量子井戸の光変調反射分光スペクトルではT = 50 Kにおいて主ピークを1.208 (1.215) eV, 2ndピークを1.160 (1.155) eV, 3rd ピークを1.100 (1.080) eVに観測した。このスペクトルにはホトルミネッセンススペクトルには振動形状の偏光依存性が表れ現在理由を解明中である。 【③光通信帯O-bandのGaAsBi/GaAs量子井戸面発光レーザの試作】面発光レーザの集光用の球面型マイクロレンズの形成についてシミュレーションを行った。曲率半径の小さなところでは、エッチングが速く進むことがレンズ形成要因である。球面型マイクロレンズの曲率半径の面内均一性、再現性を上げるための実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【①光学的品質と偏光特性を維持しつつBi組成の増加】2020年度、サーモグラフィを350℃域の基板温度測定法として採用。2021年度、基板ヒータの迷光の除去。2022年度、2-inch GaAs基板を用いて温度較正の実施、20 mm の領域で基板温度が340-345℃の範囲に入ることを実証。赤外線望遠鏡用凸レンズを作製。2023年度、超高真空装置へのレンズ装着フランジの設計・製作、自作の赤外線望遠レンズで熱画像を1.35倍にして温度分布を観測。当初の計画より十分に高い成果を上げつつある。 【②偏光が生じる機構の解明】2020年度ホトリフレクタンス(PR)とホトルミネッセンス(PL)の同時測定可能に。2021年度、測定とノイズ除去の自動化で試料温度変化等の系統的な研究が可能に。2022年度、メカニカルなチョッパーから電子制御でタングステンランプ光、レーザ光のon/offが可能に。ノイズの大幅な低減にメド。2023年度PR, PLスペクトルの両方で3つのピークからなること、強い偏光依存性を見出した。 【③光通信帯O-bandのGaAsBi/GaAs量子井戸面発光レーザの試作】プロセスの要素技術の確認段階であるが、最も重要な基板裏面の窓開け技術を確立(2020年度) 光の取り出し効率の上昇と集光機能を加えた(2021年度)。曲率半径を108 μmまで縮小できるようになった(2022年度)。再現性、面内均一性について調べ、マイクロレンズ作製のためのエッチングシミュレーションを作製。(2023年度)。
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今後の研究の推進方策 |
【①光学的品質と偏光特性を維持しつつBi組成の増加】分子線エピタキシ(MBE)装置で実証実験を確実に行うため、別の真空望装置を試験実証用に立ち上げる。望遠レンズを備えたサーモグラフィによる基板温度測定と面内基板温度分布測定をおこない、真空装置内で測定に問題点がないかを調べる。問題点があれば、問題点を解決する。問題点をすべて除去したのち、MBE装置に装着し、温度較正、再現性の確認をおこなう。Bi組成の増加法、高い結晶品質、強い偏光の3者が並び立つか実験的検証をおこなう。 【②偏光が生じる機構の解明】 (100)GaAsBi量子井戸 高指数面GaAsBi量子井戸について光変調反射分光スペクトルの温度変化を測定し電子構造についての解明を進める。 【③光通信帯O-bandのGaAsBi/GaAs量子井戸面発光レーザの試作】2024年度、集光のための球面レンズを備えた面発光レーザプロセスを確立する。
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