研究課題/領域番号 |
19K04583
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22020:構造工学および地震工学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
三神 厚 東海大学, 建築都市学部, 教授 (10262122)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 機械学習 / センサーデータ / 損傷検知 / 時系列データ / 構造物の損傷検知 |
研究開始時の研究の概要 |
高度経済成長期に建設された膨大な数のインフラが老朽化を迎えているが,技術者不足により点検が進んでいない.1つの改善策は,低価格化が進んでいるセンサーを構造物に設置して得られるデータの分析から,自動的に損傷を検知する方法を補助的に用いることである.本研究はセンサーデータに機械学習の方法を適用することで構造物の損傷検知を自動化し,インフラ点検技術者不足の問題に寄与することを最終目標としているが,特に,損傷検知手法の適切な選択や損傷検知能力向上のためのデータ処理の手法を検討し,実用化につなげるものである.
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研究実績の概要 |
センサーデータに機械学習の方法を適用することで構造物の損傷検知を自動化するため,本研究では,適切な機械学習の方法やセンサーデータの前処理の方法を検討するとともに,振動系モデルによって提案する方法の有効性を確認することを目的としている.令和4年度は,前年度に引き続き,機械学習の方法を適用して構造物の損傷を検知する取り組みを行うとともに,本研究手法の適用範囲の拡張を図った.強震計が取り付けられた構造物に想定し,それに機械学習の方法であるオートエンコーダを適用し,損傷の有無と程度を評価する試みを行った.そのために,構造物の非線形モデルを導入した.観測される頻度が比較的高い中小地震による構造物応答(線形応答)を学習させた上で,構造物に損傷が生じる程度の地震に対する応答(非線形応答)に学習済のオートエンコーダを適用した.具体的には,エルセントロ地震波と八戸波を用意し,片方の最大加速度を50galにスケーリングして学習用に用い,他方を50, 200, 800, 1600galにスケーリングして検証用に用いた.これを相互に行うことで,検討ケースを増やした.これにより,異なる周波数特性を考慮した上で,構造物に対する様々な大きさの地震動入力を考えることができた.損傷(異常)の指標として再構成誤差を使用し,損傷の有無や程度と再構成誤差との関係を考察した.これにより,強震計が設置されている構造物の地震被害の有無や被害の程度を即時に推定できる可能性を示した. 加えて,本手法を地殻変動データに適用し,火山噴火の予兆検知を試みた.具体的には,近年の火山噴火として,御嶽山,箱根山,本白根山を取り上げ,噴火地点を取り囲むGPS観測点の記録を用い,それから,地盤要素のひずみ時系列を算出した.それに本手法を適用することで,箱根山については予兆検知の可能性を示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響を受け,研究期間2年目の令和2年度より,教育に関するエフォートが大幅に増加し,その分,研究エフォートが大幅に低下することとなった.令和4年度は改善され対面授業が主流となったものの,コロナウィルス感染症が2類相当のままなので,コロナで欠席する学生に対する様々な対応を余儀なくされ,依然として教育に関するエフォートは,コロナ以前より大幅に高い状態が維持されることとなった.そのため,科研の研究課題の実施,進捗に多大な影響が生じた.このような理由により,さらに1年間の期間延長を申請し,認めて頂いた.2023年5月8日からは,コロナが5類相当になり,学生に対する特別対応も不要になると考えられるので,教育に対するエフォートをコロナ以前に戻すことで,何とか研究の遅れを取り戻したい. 以上のような環境下ではあったが,令和4年度は研究時間を確保する努力を行い,幾つかの成果を得た.得られた研究成果として,国内学会にて2件の発表を行うとともに,そのうち1件を査読論文として投稿し,受理されている(ただし,発行は2023年度).当初の研究計画からの実施の遅れ,参加した国内学会のオンライン形式への変更,海外出張の見送りから,予算が大幅に余ったため,次年度に持ち越すことになった.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,学内の授業形態がほぼ対面授業で,かつ,5月8日から新型コロナウィルス感染症が5類相当に引き下げられ,学生に対するコロナ対応が不要になるものと想定される.そのため,教育に対するエフォートがコロナ以前のレベルまで低下することが期待できるので,研究エフォートをコロナ前のレベルに戻すことを常に意識しながら進める.研究期間をさらに1年延長して頂いたので,研究に対するエフォートが大幅に減少することは何としても避け,成果をまとめたい.機械学習の分野は日進月歩なので,当初の目的を達成するため,予定していたオートエンコーダ等の手法を使いつつも,新しい知見を取り入れる努力を継続的に行い,より良い成果が得られるよう努力する.説明可能なAI(XAI=Explainable AI)については,検討を進めているものの,未だ十分な成果が得られていないので,令和5年度に引き続き導入を試みる.さらに,遅れている多質点系モデルの振動実験の準備を併行して進め,研究期間内に実施を間に合わせることができるよう努力する.得られた成果は,国内学会,海外学会において,順次発表していく.最終年度なので,論文発表に併行して,これまでの成果を取りまとめていく.
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