研究課題/領域番号 |
19K04636
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22050:土木計画学および交通工学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
山田 稔 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (50182556)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 地域公共交通維持・活性化 / 利用者コミュニティ / 地域公共交通維持・活性化 利用者コミュニティ / 地域公共交通 / 評価モデル |
研究開始時の研究の概要 |
地域住民・利用者等が地域公共交通の維持活性化に参画する事例に関して、現時点で蓄積されている相当数の情報から地域住民・利用者等のさまざまな活動手法それ自体が持つ効果・効率についての比較分析的な評価モデルを構築することを目的とする。 さらに、このモデルによる評価結果をデータ収集時に対象とした地域団体等にフィードバックして受容性を明らかにすることにより、従来からの地域主導アプローチを実施していく上で本モデルが有用に機能することを確認する。
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研究実績の概要 |
本年度は、前年度までに構築した、公共交通利用の活性化を含めた地域コミュニティ等の活動に対する参加意識として、地域が達成すべき高齢者等の生活の質に関する意識を調査分析する方法を活用して、さらなる属性別の分析を進めた。 前年度のWebアンケートのデータを用いて、地域公共交通の整備の程度や人口密度等の基本的な都市の状況を示す変数との間の関係を分析した。さらに、先に実施したパイロット調査の対象地と比べて公共交通の利便性が低い地域において自宅を訪問してのアンケート調査を実施してデータを追加することで、公共交通水準との関係を分析した。その結果、交通利便性の低い地域ほど、高齢者等に対して移動よりも家の中での基礎的な生活確保のための支援を重視すべきと考える傾向があることが明らかになり、活動参加に際して、高齢者等の交友関係を広げるという機能への配慮が潜在化する可能性があることが明らかになった。この成果の一部は、土木計画学研究・講演集へ投稿した。 さらに、福祉有償運送の運転者として高齢者等の生活全般に対する支援活動に参加している人を対象に、同様の分析を行えるようにアンケート調査を実施した。また比較対象として、一般的なタクシー運転手にも同様の調査を実施した。その結果、福祉有償運送の運転者として参加している人は、一般サンプルやタクシー運転手に比べて、家の中での基礎的な生活要素での自立を重視する傾向が見られた。 以上のことから、地域コミュニティによる交通システムへの支援のニーズが特に高いと考えられる交通利便性の低い地域や、生活機能が衰えた高齢者等を対象とする活動の場合には、現状では地域の支援活動は基礎的な生活確保の支援に手を取られ、移動環境の重要性に対する意識は十分ではないことが調査の結果から伺える。高齢者等の交友関係を広げるための実践的な支援活動の担い手となることは必ずしも容易でないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、2年度目に、多数サンプルによる調査を調査員を派遣して自宅へ調査票を配布する形式で計画していたが、新型コロナ感染拡大防止の観点から調査員の確保が困難であったため、Webアンケートに切り替え、本年度ようやく訪問アンケートが実施できた。対象地の見直し、および調査票の設計変更等に時間を要することとなったが、さらに、まだ属性別に見て十分にサンプルが確保できていない部分があり、追加が必要な状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果では、活動参加者の属性として、交通利便性の低いところや、高齢者等の生活全般を支援している人では、高齢者等の交友関係を広げるという交通機能への配慮が潜在化してしまう恐れがあることがわかったことから、より多様な属性での分析を進め、高齢者等の交友関係を広げるための実践的な支援活動の担い手を確保する方策の提案につなげる。調査分析は、再び、Webアンケートを活用することを予定している。 また、これまでの実績についてさらに学会発表を行うだけでなく、活動を行っている団体に対していくつかの想定されるケースに対する評価結果を示することで、実際に活動している利用者コミュニティにとって受け入れられるものなのかを調査し、評価モデル自身の改善とその利用の有用性の確認を行う予定である。 最後に、これらの成果を総合化し、すでに利用者コミュニティによる取組みがなされている地域、およびなされていない地域をケーススタディとして、具体的な取組みプロセスの課題を整理するとともに、これらの地域の取組みに対する行政や交通事業者との関係の在り方について提言を行う。効果的に利用者コミュニティの取組みを実現するために行政や交通事業者がどのようなプロセスを経る必要があるか、またその際にどのような選択肢の幅をもって地域住民に臨む必要があるのかについて明らかにする。
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