研究課題/領域番号 |
19K04775
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
斎藤 千尋 明海大学, 不動産学部, 教授 (30235048)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | 期待建築線 / 建物配置の予測 / AW3D 3D都市モデル / 基盤地図情報 / まちなみの予報 / 不確実な市街地の表現 / 3D都市モデル / 多変量正規分布 / 市街地シミュレーション / 予報図 / 予測図 / 隣棟間隔 / 後退距離 / 空地 / 住宅地 / 居住環境 / 建物配置 / 敷地計画 / 地区計画 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「まちなみの予報システム」を目指す技術提案を行うものである。 国土地理院により公開されている基盤地図情報を用いて、建物の配置・形状、植栽の配置・庭の広がりの予測システムを提案する。このモデルを基本モデルとして、建物の三次元データを用いることで建物の高さを考慮した予測モデル、地形、都市計画情報、地価情報を考慮することで、地区の性格に応じた予測モデルを得る。これらの結果を総合することで、確率的に表れる街区・地区レベルの市街地像を描くことができるようになる。この不確実さを伴う市街地像を、一般にわかりやすく表現する手法を加えることでまちなみの予報システムのプロトタイプを提案する。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究の実績は以下の通りである。 ①第三次メッシュで25メッシュ分、建物数で6万余りのポリゴン、街区数で3千余りのポリゴンをAmazon Web ServiceのElastic Map Reduce(AWS EMR)上で、分散処理フレームワークのApache Sparkで一貫処理することができた。これは、主に計算機クラスターのノード数やメモリの割り当てのチューニングを試行した結果である。最終的には、4コアCPUのコアノード(計算用ノード)を20ノード使用することまで許容する設定で、1時間50分ほどで、基盤地図情報の図郭による切断点の接合、街区と建物の紐づけ、街区単位での隣棟間隔、後退距離の統計の算出、期待建築線の探索的な作図、標準偏差の幅での内側、外側の限界線の作図までを一貫して処理できるようになった。 ②不規則な建物配置の街区において、期待建築線の描画を適応的に行うこと、具体的には、隣接建物、街区境界線を母図形とするバッファの半径を探索的に変化させることで、固定的なバッファで作成した場合よりも多くの場合で期待建築線の描画ができた。固定的な方法の場合(バッファ半径を平均値+標準偏差とした場合)で15%に留まっていた成功率を拡大法で65%に高めることができた。拡大法では、バッファ半径を平均値-2標準偏差を始点として閉じた期待建築線が描けるまで1/4標準偏差ずつ拡大していく方法をとった。また期待建築線の外側に標準偏差分拡大した範囲に38%の現状建物の形状が収まっていた。 ③その他、計算結果のモニタのためのThree.jsによる可視化プログラムを作成した。AWS EMRで出力された大量のデータをWebサーバを介してアクセスし、クライアントPC側のブラウザで結果の確認をできるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
AWS EMR上のApache Sparkのチューニングに予想以上に手間取ったため。わかってみれば簡単なことであったが、特定の計算ノードに計算タスクが偏ってしまい、クラスターの計算能力を引き出せず、またタスクが偏ったノードでメモリ不足となり、計算に失敗していた。改良に集中したところ計算の段階に応じたパーティション数(並列処理の単位)の調整を行うことで、エラーを極小化することと計算能力の活用ができようになり、安定して25メッシュのデータの処理ができるようになった。 学内業務(評価対応、改組対応等)の増加傾向もやや影響してる。
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今後の研究の推進方策 |
①相関のある乱数による予想建物の壁面位置、高さの設定 建物の配置の予想図自体は隣棟間隔、後退距離の設定により周囲の建物や街区のバッファ図形の重なりとして描く。この隣棟間隔、後退距離について、建物の高さ、隣接建物の方位、面積、高さ、緑被の介在の有無、また立地する用途地域との共分散行列から相関のある乱数を生成するモデルを得る。これにより、隣棟間隔、後退距離を被説明変数とするモデルではなく、相互に相関をもつ隣棟間隔と高さ、後退距離と高さを得るようにする(2023年度中に予定していた作業)。 ②3Dデータで得た結果の基盤地図情報での応用 基盤地図情報は整備範囲も広く過去のデータの蓄積もある。高さ情報はないが、平面形状の精度は高い。関心のある特定の街区については現地での目視やグーグルストリートビュー等による高さ情報の補完から、将来の建物配置の予測を描画する仕組みを用意する(2023年度中に予定していた作業)。 ③AW3Dデータの高さデータの建物単位への割り当て AW3Dのデータは、建物高さが違う部分があると別ポリゴンとして記録され、建物単位のポリゴンにならない。データ入手当初は限定的な問題と考えていたが、テスト分析を進めるうちに影響が大きく無視できないことが判明した。基盤地図情報を基準に、同一建物のポリゴンをまとめて扱えるようにする(2023年度中に判明した課題への対応)。 ④仮想的な敷地線の設定 バッファの拡大法により期待建築線の描画の成功率を高めることができたが、街区内に空き区画がある場合には現状建物と大きく異なる期待建築線が作成される。可能であれば、空き区画の境界線の隣接建物からの後退距離を隣接関係の統計から仮定することで、仮想的な敷地を設定し、期待建築線を形成するバッファの母図形に含めることで期待建築線作成の成功率と精度を向上させることを試みる(2023年度中に得たアイデア)。
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