研究課題/領域番号 |
19K04816
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 長崎総合科学大学 |
研究代表者 |
山田 由香里 長崎総合科学大学, 工学部, 教授 (60454948)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 長崎居留地 / Dr. Brian Burke-Gaffney / 旧グラバー住宅 / 東山手洋風住宅群 / Joshua Holmes Vogel / 文化財修理技術者・井上梅三資料(1955年以降) / 高松松平別邸・披雲閣(1917) / 鎌倉大仏(高徳院)観月堂(元・景福宮建物) / 対馬の石屋根 / 椎根の石屋根倉庫 / 島山石 / 写真家・仁位孝雄氏 / 高松松平別邸・披雲閣 / 清水組 / 文化財修理設計技術者・井上梅三 / 韓国と対馬壱岐の石文化 / 仁川・長崎居留地研究 / 忠清北道・清州神社 / 貿易都市長崎 / 熊本利平 / 壱岐の古墳 / 対馬の石屋根倉庫 / ハナ・ベネット・グラバー / 旧仁川英国領事館 / 仁川外国人墓地 / モダン仁川 / モダン長崎 / 近代仁川/韓国 / 近代長崎 / 都市と建築 / 開港居留地 / 日本統治 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、韓国・仁川(インチョン)の開港居留地時代から日本統治時代(1883~1945年)の建築と都市について、長崎から渡った人・技術・文化の記憶や記録を通じて、歴史的に明らかにすることを目的とする。 具体的には、近代仁川の建築と都市について、長崎及び日本国内の史資料から明らかにし、仁川の近代建築や都市の保存継承への一助とし、翻って近代長崎の建築と都市についても明らかにすることを目的とする。 いずれの成果も、近年韓国で進む統治時代の調査研究に還元する。また研究調査を通じて、相互の歴史と文化の理解に繋げることも目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究成果は以下の4点からなる。 第一に、居留地時代の長崎に関する調査研究である。旧グラバー住宅の室名再考、東山手洋風住宅群調査、長崎国際交流史研究第一人者のブライアン・バークガフニ博士の公開講演会を実施した。 第二に、長崎活水学院校舎設計の建築家ジョシュア・ヴォーゲル(1889-1970)とヘレン・ホリスター(1887-1947)の展覧会開催である。両建築家の研究は、16K06698でオハイオ州立大学図書館所蔵資料調査を行った。これに続くものである。ヴォーゲルはヴォーリズ事務所着任直後の1913年にソウルに派遣され、ソウルYMCAと梨花大学シンプソン記念館の現場の基礎工事を監理した。これをはじめ、1912~1965年のコロンバス、近江八幡、ソウル、東京、シアトル、上海、長崎で手掛けた建築を初めて公に明らかにした。 第三に、1941年に清州神社(忠清北道)を手掛けた文化財修理設計技術者・井上梅三(1864-1963)の追加資料の発見である。松江市が講演会を動画で公開したところ、御孫子がご覧になり、1955年以降の資料の残ることが明らかになった。お会いして聞取りを行い、梅三の経歴がさらに明らかになった。 第四に、大正から戦前にかけ、李王垠をはじめ、皇族・華族の高松来訪時の迎賓施設として利用された高松松平別邸・披雲閣(重要文化財、1917・大正6年)における、2021年度の成果公開(清水組の見積書と城内整備、三大行幸啓の建物の使い方)である。 第五に、韓国研究者との交流で、11月に韓国国史編纂委員会の張龍經編史研究官、崔銀珍編史研究士らの壱岐・熊本利平関連資料調査、12月に元漢陽大学冨井正憲博士の鎌倉大仏(高徳院)観月堂(元・景福宮建物)調査、3月に冨井博士、現代芸術家鎌田友介氏(海外日式住宅研究者)、ソウルguga都市建築研究所米田沙知子氏の旧五輪教会堂調査に同行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度は、本来ならば研究最終年で、「長崎に遺された記憶と記録を通してみる、近代仁川の建築と都市に関する史的研究」を総合的に検討し、成果を仁川と長崎での展覧会開催として結実させ、両地で統治時代の建築と都市について理解を深めてもらう計画であった。 しかし、パンデミックによって韓国への渡航が叶わず、ようやく国内の最小限の移動が叶っただけであった。これで、3年間連続で、予定していた調査を実施できなかった。 代わりに、長崎居留地の調査研究と講演会開催、建築家ジョシュア・ヴォーゲルとヘレン・ホリスターの展覧会開催、高松・披雲閣の展覧会協力を実施した。先に渡航制限の解けた韓国側の研究者を日本で受け入れた。 計画していた仁川での現地調査は進まなかったものの、仁川・韓国―長崎・日本の文化交流の周辺部を充実させる成果は得られた。 仁川において調査を進める当初の調査計画は、すでに3年間遅れた。一方で、関連調査は進展し、調査成果を活かした論文発表、展覧会開催、講演会開催に結実した。成果そのものは社会的に大きな意義をもつ。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度も渡航制限が続くことは予想していたが、コロナ禍3年目が経過する中で、自分の気持ちの上で、身体と時間に自由が利かない場面が多く出てきた。コロナ禍は子育て中の女性研究者に多くの困難をもたらしたが、まさに渦中にいる。1年の延期が叶い感謝するが、現在の研究に使える時間を考えると、渡航できなかった期間と同じ期間の延長を本来はお願いしたいところである。 しかし、2021年度の研究実施状況報告書で予想していた2022年度の国内での活動はほぼ実施しており、研究としては前進していることを、本報告書を書きながら確認できた。少し安堵している。 2022年度の韓国研究者受け入れの中で、韓国での調査の際は協力頂ける申し出を得た。2023年度は、仁川におけるハナ・グラバーの足跡調査、ソウルにおけるヴォーリズ事務所設計建物の現状調査、群山・仁川の旧長崎十八銀行支店の建物調査、群山の熊本利平旧宅と熊本農場跡地調査などを予定する。
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