研究課題/領域番号 |
19K04817
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
安 箱敏 呉工業高等専門学校, 建築学分野, 准教授 (30725908)
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研究分担者 |
石田 潤一郎 武庫川女子大学, 建築学部, 教授 (80151372)
中川 理 神戸女子大学, 家政学部, 客員教授 (60212081)
三宅 拓也 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 助教 (40721361)
西川 博美 岡山県立大学, デザイン学部, 教授 (00749351)
中嶋 節子 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (20295710)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 京城市街地計画 / 京仁市街地計画 / 国防都市計画 / 富平地区 / 防空細道路 / 保健広場 / 工業団地 / 防空広場 / 京仁地方 / 都市防空 / 緑地地域 / 防空公園 / 風致地区 / 都市防空計画 / 公園計画 / 防空都市 / 緑地計画 / 朝鮮半島 / 近代産業都市化 / 都市公共用地 |
研究開始時の研究の概要 |
1930年代に入ると、日本国内から外地への工場進出思考が高まり、植民地朝鮮の各主要都市では産業都市化が進んでいく。これらに伴う都市問題を解消すべく、都市計画制度の整備と、その下での諸公共施設の配置計画が進む。しかしその時代は深刻な線時期に突入する時期でもあり、朝鮮半島の主要都市の整備にも影響を与えることとなる。本研究では,1934年朝鮮市街地計画令施行以降,本格化していく工業団地および住宅地造成事業に伴う都市公共用地の確保,都市施設計画に注目する。そこでは戦時対策と融合しながら進展する植民地支配下都市計画の特殊性にも目を向ける。さらに解放後の状況にも注目して事業の遂行と変容の過程を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、現在のソウルとその周辺部を中心に1930年代後半より第2次世界大戦の終戦までなされていたおよそ10年間を基準軸とし、3つの主要都市計画制度軸を立て調査を進めてきた。その一つ目は、「市街地計画」の最優先事業といえる「土地区画整理事業」および「住宅地造成事業」の対象地域に計画された①「公共用地」と都市施設である。二つ目は、「京仁市街地計画」まで拡張される②「工業地域」及び「住宅地造成事業」である。これらに加え、深刻化していく戦時下で展開していく③「都市防空計画」といったいわゆる「都市改造事業」を三つ目に設定した。研究方法としては、行政文書、京城府会議事録、各種統計、新聞など文献史料の博捜を基本としている。 都市の産業構造化を目指していた1930年代までの計画方向は、軍需産業の拡大に合わせた工業地域の整備に模索を重ねていく。本研究における調査対象としては、「市街地計画」の一環として進められていく「公共空地」計画を前提に、最終年度目標に設定していた「都市防空計画」を基準軸とし、京城府の「保健広場」について考察を深めた。成果の一つとして、1942年に作成された「京城府総合防空施設工事位置図」の原図の保管場所が入手でき、現地での原文史料が発見できたことがあげられる。これをもとに詳細を確認、現況との照合確認作業を行った。現地調査をとおしては、1943年以降の「保健広場」の工事進捗程度が明らかになりつつあり、その成果を2023年度の建築学会学術大会に発表した。さらなる現況との照合作業をとおしては、ソウルと仁川間に計画されていた京仁地域の「富平地区」における同時期の「市街地計画公園」および「緑地地域」における解明が進んでおり、成果一部を2024年度同学会学術大会に発表する予定でいる。京仁地域における「保健広場」計画内容一部や位置図を新たに入手できたことも一つの成果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍中に滞っていた現地での確認作業を昨年度より再開した。韓国国家記録院(以下、記録院)など、現地史料においては、オンライン公開文書のみを頼りながら研究を続けていたが、その間に図書館や記録院の整備作業が進んだことに恩恵を受け、関連史料の発掘も順調に行われた。一般に公開されない行政史料を含めて、原図など原文史料の照会が必要な場合は、事前に所在場所を把握し調査に着手した(2024年5月の現在、記録院の所蔵史料は韓国内の4箇所(ソウル・京畿道城南市・大田・釜山)に分散保管されている)。現地調査では、朝鮮総督府発行史料の大部分を保管する釜山記録館での文献捜索を先に、ソウル市内に設置されたと推測される「保健広場」20箇所余りのうち、確認ができていなかった1941年以降の計画箇所を中心に現地確認を行った(9箇所)。調査をとおしては、高層マンションの開発と同時に用途解除されたことで跡形の追跡すら困難な場合があるとしたら、近隣公園に用途変更されたのちに現在に活用されている事例、ほかには、軍用地として残存するケースなど、痕跡を残す一部の現状確認ができた。発見した史料等をもとに、目標していた京城府と京仁地域における「保健広場」「防空公園」「郊外防空広場」など「防空空地」計画について追加調査し全体像の解明を続ける予定でいる。以上の成果を以て、当初の計画以上に進んでいることと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究方法においては、今まで続けてきた国内外の文献調査による詳細を把握、現地踏査等による照合確認作業を基本方法とする。最終年度の研究課題として設定していた「都市防空計画」といったいわゆる「都市改造事業」を研究対象の基準軸にしながら、戦時体制の強化により複合的に変化していく都市計画様相の具体像を解明する。前年度までの課題目標であった京城および京仁地域の「市街地計画」については、昭和地区を含む「富平地区」までの計画詳細を明らかにし、「公園・緑地計画」を中心とした終戦後の変容過程について詳細の解明を続けている。1937年11月に公布・施行された「防空法朝鮮施行令」を機に着手する「都市防空計画」の具体例として「保健広場」の築造計画が挙げられ、京城府における計画詳細については、「研究実績の概要」に述べたとおりである。他には、平城府、釜山府、仁川府に設置を予定していたとされるが、京城府以外の計画実態については知られていない。本年度には、このような状況を踏まえ、新しく入手できた仁川府の「保健広場」築造計画事例の考察を深めることを先に、戦時下の防空対策と連携しながら進捗させていく現在のソウルとその周辺部の計画特徴について検証し、本研究の完成を図る。
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