研究課題/領域番号 |
19K04819
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
山田 岳晴 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (40419841)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 玉殿 / 神社 / 本殿 / 一木造出 / 須弥壇 / 開山堂 / 仏殿 / 技法 / 建築 / 起源 / 発展 / 意匠 / 内殿 / 滋賀県 / 和歌山県 |
研究開始時の研究の概要 |
玉殿は神体を奉安する神社本殿内に安置された小建築である。玉殿の安置は成立以来、本殿内の平面構成と密接な関係があり、本殿の形式や祭祀に大きな影響を与えている。さらに玉殿は神を祀る神社建築の特質と深く結びついており、神社建築史上重要である。 本研究では、①玉殿の実測調査に基づく図面資料を提供する。②各玉殿の建築的特徴の分析を行い、本殿内部からの視点で神社建築を捉える。③歴史や地域文化の観点として、分布地域ごとに玉殿の成立と変遷過程の解明を図る。以上の①~③を連関させて実施し、玉殿を日本建築史の体系的な資料とする。加えて、様々な研究分野での玉殿及び本殿の非文献資料としての活用に道を拓く。
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研究実績の概要 |
今年度(第5年度)も継続して、神体を奉安する神社本殿内に安置された小建築である玉殿と、平面構成や形式を持つ祭祀を行う場である神社本殿とを併せて調査分析するという視点に立って作業を進めた。玉殿に関する建築的特徴の把握などの調査を進めつつ、玉殿や本殿に関する資料の収集と一部の成果発表を行った。 広島県東広島市の宮山八幡神社の全国的に珍しい二間社玉殿については、昨年度投稿した論文の審査・補正を経て、掲載決定となった。同玉殿については、今後、一木造出などの中世玉殿の特徴などの実地調査を継続して進め、分析を深める予定である。 広島県三原市の佛通寺含暉院仏殿及び開山堂は、仏殿(現名称は地蔵堂)には内部に須弥壇を配しており、開山堂にも内部に宝篋印塔を安置していたと考えられるなど、本殿・玉殿の関係に共通する、寺院建築における入れ子状の祭祀空間を持っている。本例について千原美歩氏と協働して調査、研究を進め、2棟の建築物の創建当初の配置及び建築形式について、建築関連資料及び現地調査結果を検討し、考察を行った。検討の結果、創建当初は、仏殿の後方に開山堂が建っていたことが判明し、また、創建当初の仏殿と開山堂の建築形式が明らかにでき、論文を投稿した。 また、滋賀県域では、盛期の中世玉殿と共通する複数の一木造出の特徴を持った、小規模本殿が複数確認できており、論文投稿の準備を進めている。 以上のように、滋賀県域の中世の神社においては、覆屋内に建つ一間社も多く、小規模本殿と玉殿の関係を示す特徴が明らかになった。また、近畿・中国地域において、神社本殿内部の祭祀空間と関連する可能性がある中世寺院内部の祭祀空間についても、状況を一部確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神社玉殿と本殿との関係性について、第2年度に調査した広島県で発見した中世の神社玉殿の事例の分析に基づく成果は審査論文として掲載決定となった。初年度に調査した滋賀県域の中世の一間社の小規模本殿の事例、及び、第3年度に新たに発見した中世の神社本殿の事例については、審査論文として投稿準備が進んでいる。それら以外にも中世の本殿・玉殿の構成と類似性がある寺院建築事例についての審査論文の掲載決定や、期間中に必要な分析・研究が進んでいる。また、研究の過程で、現存する玉殿の新たな事例があるとの情報も得ており、調査に向けて整いつつある。一方で、新型コロナウイルスの影響で第1年度から第5年度にかけて、まん延防止等重点措置等の断続的発出、往来自粛などの感染防止対策により、令和元年度末以降の実測調査の延期と調整による調査・分析の遅れの完全回復までには至っていない。また、資料整理の人員の確保も困難な期間が長かったため、当初の計画からはやや遅れている状況と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度(第6年度)であるため、神社本殿内の小建築である玉殿と、神社本殿の平面構成や形式との関係を具体的に把握するための分析を進める。実測調査については、当初計画とやや異なるが、審査論文の掲載決定など成果の公表などが進めることができており、調査を含む分析を進め、関係者の協力を得て、研究を審査論文として公開していく。 滋賀県の貴船神社について、中世の一間社の小規模本殿の当初の形態の復元などを含めた調査成果について、論文をまとめ投稿する。また、関連事例調査で明らかとなった佛通寺の研究成果についても、論文をまとめ投稿する。さらに、現存の情報に基づく和歌山圏や山陽道地域の事例の実測調査、そのほかの現存する玉殿の情報収集も継続して行う。 次年度は、当初の計画から再延長した最終年度(第6年度)であるが、新型コロナウイルス感染症の影響による遅延状況の回復を図り、第3年度に実施ができなかった、個別事例の補完調査と資料整理及び、各玉殿の建築的特徴の分析が課題であると考えている。これら調査・研究を継続するとともに、これまでの作業をまとめて論文の執筆及び投稿を進める。
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