研究課題/領域番号 |
19K04951
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宮縁 育夫 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 教授 (30353874)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | マグマ水蒸気噴火 / 噴火堆積物 / 層序学的調査 / 物質科学的検討 / 火山活動推移 / 火山 / 噴火推移 / 発生予測 / 堆積物層序 |
研究開始時の研究の概要 |
わが国の活火山で頻発するマグマ水蒸気噴火について,(1)最近の事例の映像記録や堆積物の層序・特徴から,どのような噴火推移をたどっているのか,(2)過去の噴火記録・歴史文書の精査と火口周辺域の調査から,その発生頻度と爆発的噴火に至る過程を歴史学的・層序学的に明らかにする.また,(3)過去数千年間における同噴火堆積物および上下の火山灰層の顕微鏡観察や化学分析を行って,マグマ水蒸気噴火への推移と発生には共通した特徴が検出できるのかどうかを物質科学的に検討する.そして,(4)阿蘇火山中岳をはじめとする火口湖を有する火山における将来のマグマ水蒸気噴火の発生予測や噴火災害軽減に向けた提案を行う.
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研究実績の概要 |
近年,わが国の活火山で頻発するマグマ水蒸気噴火は,顕著な前兆現象が検出されずに発生することが多く,人命や火口周辺の施設に甚大な被害を及ぼすなど,防災上極めて危険な噴火現象の一つである.本研究では,阿蘇火山中岳を主な調査対象として,現地調査や噴出物の観察・分析等の結果から,マグマ水蒸気噴火への推移と発生過程を地質学的に検討し,将来のマグマ水蒸気噴火災害の軽減に向けた提案を行うことを目的としている. 2023年度は,阿蘇火山中岳第1火口における2021年10月20日の爆発的噴火に伴う降灰調査の結果を報告する.噴火発生直後の3日間に中岳第1火口から南東方の熊本県高森町・南阿蘇村,さらに遠方にあたる山都町,宮崎県高千穂町・五ヶ瀬町にかけての地域で噴出物の分布状況を調査し,降下火山灰の量が15000トン程度と概算された.その後,噴火警戒レベルが1に下げられたため,中岳火口近傍域での現地調査が可能となった.まず中岳第1火口から南へ1 km付近に位置する砂千里ヶ浜で気象庁とともに行った現地調査では,木道上や2020年以前の火山灰上に厚さ1 cm程度の灰色火山灰が明瞭に認められ,砂千里ヶ浜南端の尾根付近での堆積量は10~14 kg/m2程度であった.この堆積量データに,噴火発生直後に4 km以遠の地域で得られたデータを加えて,等質量線を描き直して再計算した結果,降下火山灰の量は47000トン程度となった.これは噴火直後に概算した結果の3倍程度の値である.このように,遠方域だけの調査結果から見積もった降下テフラの総量は,火口周辺域の調査結果を加えた場合に比べて大幅に少なくなる事例は,中岳第1火口の2014~2015年の噴火活動時の降灰調査でも報告されている.小規模で噴煙高度も低い噴火時の降下テフラの総量を正確に見積もるためには,近傍域での堆積量を把握することが重要であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の主な調査対象である阿蘇火山中岳では2019年前半から火山活動が活発化し,噴火警戒レベルが1から2に引き上げられるなど(一時期レベル3に設定),安全上の問題から火口周辺域への立入と調査が実施できない期間が多かった.2023年度も4月~12月は噴火警戒レベルが1に引き下げられたが,その期間もガス規制等によって火口周辺域への立入と現地調査が実施できない状況がたびたびあった.また,2024年1月~3月は再び噴火警戒レベルが2に引き上げられて,現地調査に支障をきたした.そうした事情のために進捗状況は大幅に遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の特徴は,わが国でもっとも活発な火山の一つである阿蘇火山中岳を主な対象として,野外調査をベースとした研究を実施することである.とくに,中岳第1火口周辺域での噴出物調査が最重要であるが,本研究の開始時から2023年度末までの大部分の期間,噴火警戒レベルの引き上げにより,安全上の問題から現地調査を行えない状況が続いた.活動が静穏化して噴火警戒レベルが引き下げられた,わずかな期間に現地調査を行ったが,現在の火山活動の推移を予測することは難しく,2023年度もガス規制等を含めて火口周辺域へ立ち入れないことが多かった.そこで,本課題の研究期間を再延長するとともに,過去の噴火記録と歴史文書の精査や,遠方域でも実施できる過去数千年間の噴火履歴調査,これまで採取している噴出物試料の観察や分析なども検討し,研究課題全体のとりまとめにむけて全力で取り組んでいるところである.
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