研究課題/領域番号 |
19K04975
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
岩坪 要 熊本高等専門学校, 生産システム工学系ACグループ, 教授 (60290839)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 落橋防止ケーブル / 耐震設計 / 引張実験 / 破壊力学 / 2016年熊本地震 / 振動実験 / 落橋防止装置 |
研究開始時の研究の概要 |
橋梁の耐震設計では,想定する地震動に対して橋梁本体の損傷を最小限にとどめること,さらに様々な損傷が発生しても落橋を防ぐこと,という考え方がある。これまで耐震対策工事が行われた結果,2016年熊本地震では落橋した橋梁は僅かであった。しかし山間部の橋梁では落橋防止ケーブルが破断したため,この事実をふまえた既設橋・新設橋への対応が喫緊の課題である。本研究では,いかなる状況下でも落橋防止ケーブルとしての機能が十分に発揮できる高性能ケーブルを開発するために,実験と解析を行いながら破断メカニズムを解明し,落橋防止ケーブルで必要とされる要求性能を整理し,新しい落橋防止ケーブルの開発を目指す研究である。
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研究実績の概要 |
橋梁の耐震設計の中で大地震に支承が損傷した時に落橋を防ぐため,最後の砦として機能するのが落橋防止システムである。2016年熊本地震では山岳橋梁で落橋を防いだものの落橋防止ケーブルが破断した。そこで,この事実をふまえて本研究では既設・新設問わずに落橋防止システムの高機能化を主目的としている。そこで本研究では,落橋防止システムとしての目的機能を十分に発揮させるため,ケーブルに求める要求性能の確立を目指している。期間は3か年として①ケーブル破断条件と引張挙動の確認,②落橋防止ケーブルの地震時応答実験,③高性能ケーブルへの展開の3点について検討を行う。 2019年度は引張実験を通じて,傷があると,最大強度手前に破断することがわかった。2020年度はコロナ禍のために,在宅勤務などの勤務状況の変化に伴い研究活動は停滞したが,既存の模型を使って振動台実験を行い,橋梁の横方向変位移動の拘束(低減)に落橋防止ケーブルが機能することが確認できた。 2021年度は,静的な荷重条件下で,ケーブルに軸力が作用している状態で面外方向から外力が作用する状況を再現する実験装置を製作し,破断に至る挙動と最大強度の変化を調べた。数パターンの実験を行ったが,面外方向からの作用時の軸力の変化を確認した。しかし,ワイヤーロープが低強度すぎたため,再実験の必要性を考えている。 2022年度と2023年度には実際の落橋防止ケーブルの引張実験を実施した。実際の落橋防止ケーブルに傷を導入して引張実験を行った結果,以前行った丸棒の引張実験と同様の傾向を示し,傷がある場合の最大耐力のピーク値は弾性限界を超えるが0.2%耐力以下になることを確認した。しかし,まだ他の実験ケースを検討すべきで,分析にもデータは不十分である。以上の結果,研究期間の延長が必要であると考え,延長申請を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅れていると評価した。2020年度のコロナ禍の影響で行動制限を受けたため2021年度は実験を精力的に行った。これまでの検討の中で,振動台を用いた加振実験よりも,静的な挙動を調べた方がメカニズム解明には有用であると考えたたため,静的実験装置を考案し製作に取り掛かり実験を行った結果,いくつかの発見・確認が出来た。新しく製作した実験装置は大型・高強度供試体の対応は不可能であるが,難しい2軸方向の加力が可能な装置であるため今回の研究成果の一つである。ただし,これまでに実験で用いたケーブルは低強度の者であったため,固定治具の調整に難航した。そこで,2022年度と2023年度には,実ケーブルを用いた引張実験を万能試験機で行った。その中で,これまでの知見から想定される結果が得られていたと考えいる。しかし,まだデータ数が不十分である点と,他のケースについて調べることが必要になったため,2024年度までの延長を申請した。これまでの検討により,様々な実験でのデータサンプリング手法や,データを抑える観点などを整理できている。そこで,より深く分析をするために実験データの補充を行うための実験を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,①ケーブル破断条件と引張挙動の確認,②落橋防止ケーブルの地震時応答実験を経て,③高性能ケーブルへの展開の3段階の検討を行う予定としている。課題①については,鋼棒,および実ケーブルを用いた実験を通じて,健全モデルと損傷モデルの引張挙動の差を明確にし,ピーク耐力への影響についてデータがそろえつつある。また,横力を受けたケーブルの挙動を調べる実験を行ったが,供試体ならびに実験方法の課題があり,検証を含めた実験を行う必要がある。課題②については,振動台による加振実験から,落橋防止ケーブルはケーブル軸方向だけでなく,軸直角方向への加振でも橋梁の応答を抑えることが分かった。つまり,ケーブル本体にも負荷が作用していることが分かった。課題③については,材料的なアプローチは難しいが,引張挙動特性を加味して,引張力を低減させるような構造システムが妥当ではないかと考え,実験の準備をしている。 以上のように,全体の状況としては遅れ気味ではあるが,課題①の実験結果の精査と課題③の解析等を今後は実施する予定である。 延長を重ねた結果,今年度が最後の年になるために,残りの課題へのアプローチを実施し,実験結果の精査とまとめを行う予定としている。また,論文投稿も実施する予定としている。
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