研究課題/領域番号 |
19K05295
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
牧本 俊樹 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50374070)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | GaAsN / MBE / PL / エキシトン / 光伝導特性 / 有効質量 / バンドギャップエネルギー / S-shape特性 / 局在準位 / Nクラスター / 電気伝導特性 / 結晶成長 / 励起子 / 光学特性 |
研究開始時の研究の概要 |
励起子とは、半導体中で負の電荷を持つ電子と正の電荷を持つ正孔がクーロン引力で結びついた粒子である。この励起子を使うと光の吸収が促進されるので、太陽電池の効率を増加させることができるが、室温で半導体中に安定な励起子を発生させることは難しい。ここで、GaAsN中では励起子が存在しやすいことが期待でき、2種類の薄膜を交互に積み重ねた超格子内では励起子が存在することが知られている。そこで、GaAsNを用いた超格子構造では、GaAsN自体と超格子構造の相乗効果により、安定な励起子を発生させることが期待できる。本研究では、GaAsNを含む超格子を作製することにより、安定な励起子を発生させることを目指す。
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研究実績の概要 |
RF-MBE法で成長した不純物をドーピングしたGaAsNを評価することにより、以下に示す3点の研究成果を得た。 (1) 昨年度に提案したフォトルミネッセンス(PL)特性を用いた電子の有効質量を評価する方法を用いて、GaAsN中の電子の有効質量の窒素組成依存性を測定した。GaAsに比べて、GaAsNにおける電子の有効質量が大きいので、GaAsN中の励起子の束縛エネルギーが高くなる。したがって、励起子吸収を利用することにより、効率の高い太陽電池が期待できる。今後は、GaAsN中の励起子と光伝導特性の関連性を評価する予定である。 (2) 時間分解PL測定を行うことにより、Be不純物濃度を変化させたGaAsN中のキャリアの寿命を測定した。光励起を停止した後にはPL発光強度が減衰する。この減衰過程には、2つの時定数が存在した。長い時定数の値は、Be濃度や測定温度に依存せずに一定であったので、GaAsN中の局在準位に関連する発光であるものと考えられる。また、時間分解PLでは、S-shape特性が観測されなかったので、局在準位の濃度は限られているものと考えられる。以上のことから、Beを高濃度にドーピングしたGaAsNでは、バンド間遷移のキャリアの寿命が短くなったために、S-shape特性が消失したものと考えられる。 (3) 不純物をドーピングしたGaAsNに対するX線逆格子マッピングを測定した。その結果、不純物をドーピングすることにより、GaAsNのc軸方向の揺らぎが減少することを明らかにした。その理由として、不純物と窒素原子が結合することにより、格子間に存在する窒素原子が減少したことが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルスによる実験室への入室禁止の影響、および、入室禁止期間中にMBE装置が故障した。このため、2022年度の研究進捗は当初の計画よりもやや遅れているので、2023年度も引き続き本研究を継続することにした。ただし、当初の計画以外の研究成果として、以下のような知見が得られた。 電子の有効質量を測定する方法を提案するとともに、窒素組成が1%以下のGaAsNにおける有効質量の窒素濃度依存性を明らかにした。また、不純物ドープGaAsNに対する逆格子マッピングを測定することにより、不純物がGaAsN成長に及ぼす影響を明らかにした。これらに関連した研究成果を国内会議で発表した。 さらに、時間分解PL測定を行うことにより、Be不純物濃度を変化させたGaAsN中におけるPL発光過程を明らかにした。そして、この研究成果を国際会議で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルスによる実験室への入室禁止の影響、および、入室禁止期間中にMBE装置が故障した。このため、2022年度の研究進捗は当初の計画よりもやや遅れているので、2023年度も引き続き本研究を継続することにした。ただし、当初の計画以外の研究成果として、GaAsN中の電子の有効質量の窒素濃度依存性や局在準位でのキャリア寿命による知見が得られた。 当初の研究計画通り、RF-MBE法を用いて、不純物ドープしたAlGaAsN系半導体やGaAsN系超格子構造を成長する。そして、光伝導特性やPL測定などを用いることにより、成長した構造の光学特性を評価する。さらに、それらの光学特性をAlGaAs/GaAs超格子と比較することにより、GaAsN系超格子の特徴を抽出することを目標とする。
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