研究課題/領域番号 |
19K05482
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
|
研究機関 | 早稲田大学 (2021-2022) 東京理科大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
そ合 憲三 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, その他(招聘研究員) (90147504)
|
研究分担者 |
川崎 常臣 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (40385513)
朝日 透 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80222595)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 不斉自己触媒反応 / 硤合反応 / 不斉の起源 / ホモキラリティー / 絶対不斉合成 / キラル対称性の破れ / 不斉認識 / 自己増殖 / Soai反応 / ジアルキル亜鉛 / 硫酸トリグリシン / 電場 / ピリミジンカルバルデヒド / ピリミジルアルカノール / グリシン / キラリティー |
研究開始時の研究の概要 |
生物はL-アミノ酸などに示されるように,像と鏡像の関係にあって重ね合わせることができない一方のキラル化合物のみから成り立っており,その起源は生命の起源にも関連する長年の謎とされている。鏡像体過剰率が増幅する不斉自己触媒反応(硤合反応)を用いてホモキラリティーの起源を解明する。すなわち,絶対不斉合成やキラルでない化合物が形成するキラル結晶を不斉の起源として不斉自己触媒反応と組み合わせてホモキラリティーに至る過程を解明する。
|
研究実績の概要 |
地球上の全ての生物は,L-アミノ酸などのように実像と鏡像の関係にあって重ね合わせることができない一方のキラル化合物から構成されており,生命のホモキラリティーと呼ばれている。キラル化合物のホモキラリティーの起源を解明することは,生命の起源解明に関連する長年の課題とされている。本研究は,鏡像体過剰率が極微小から99.5% ee以上に著しく向上する不斉自己触媒反応(硤合反応,the Soai reaction)を用いてホモキラリティーの起源を解明することを目的とする。 不斉の起源として種々の要因を用いて不斉自己触媒反応を行った結果の取りまとめを行った。円偏光が不斉起源となり,不斉自己触媒反応のエナンチオ選択性の方向を規制し,対応する絶対配置の生成物が高い鏡像体過剰率で得られる。さらに,キラルな無機結晶およびo-テルフェニル等のアキラルな有機化合物が形成するキラル結晶が,硤合反応の有効な不斉起源となり,高い鏡像体過剰率の生成物を与える。さらに,不斉源を全く用いずにピリミジン-5-カルバルデヒドとジイソプロピル亜鉛を反応させると,初期生成物の鏡像異性体の統計的揺らぎにより生じる不斉の偏りが,系内での不斉自己触媒反応により増幅され,測定可能な鏡像体過剰率をもつ不斉な生成物を与える。これは絶対不斉合成,すなわち分子レベルのキラル対称性の破れの最初の例であり,化学の従来常識である不斉源が存在しない条件下では常にラセミ体が生じるという定説を覆した。さらに,炭素,窒素,炭素同位体置換により生じる極微小不斉及びアミノ酸等の極微小不斉の偏りを硤合反応が不斉認識することを明らかにした。硤合反応は,キラル化合物が自己増殖するものであり,生命の特質である自己増殖とホモキラリティーを兼ね備えているという意義を持つ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不斉自己触媒反応(the Soai reaction)が,生命の2つの特質である自己増殖と(構成成分の)ホモキラリティーを兼ね備えた意義をもつことを強調することができた。すなわち,生命と同様に硤合反応が自己増殖し,キラル化合物の自己触媒的自己増殖の最初の例であることを主張した論文を出版した。さらに,書籍”Asymmetric Autocatalysis: The Soai Reaction,” 編:硤合,川崎,松本を英国化学会から出版し,不斉自己触媒反応(硤合反応)の詳細な説明および現代の研究状況を取りまとめた。本書籍の著者の国籍は日本,米国,メキシコ,英国,ノルウェー,ドイツ,フランス,スペイン,イタリア,ハンガリー,ロシアの11カ国に及ぶ。本書において,研究代表者の硤合,分担者の川崎らは,6つの章に渡って,不斉自己触媒反応の全体像,円偏光との関わり,不斉無機結晶,有機結晶,結晶表面との関わり,絶対不斉合成,不斉自己触媒構造の解析,不斉自己触媒反応における異常な不斉誘導につき詳述した。さらに,硤合はノーベル財団主催の167回ノーベルシンポジウムChiral Matterでの不斉自己触媒反応の招待講演内容を書籍として出版することができた。この他にも不斉自己触媒反応とホモキラリティーの起源に関する総説を出版した。以上のとおり,成果の発信を十分に行うことができ,おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
不斉自己触媒反応(硤合反応)を用いて,ホモキラリティーの起源として提唱されている要因(トリガー)と相関した絶対配置を有する高い鏡像体過剰率の生成物を合成した結果についてトロまとめ,ホモキラリティーの起源の検証を行う。アキラルな有機化合物が形成するキラル結晶などを不斉トリガーとする不斉自己触媒反応の結果を取りまとめる。
|