研究課題
基盤研究(C)
新しい光源(400億分の1秒幅のパルス状の光の列)を用いた新しい光吸収分光法(RIPT過渡吸収分光法)によって、光励起された分子が100億分の1秒の時間スケールで起こす高速現象の観測を行う。このような現象は、これまで主に発光分光法によって観測されてきた。一方、光吸収分光法は、物質の発光の程度に関わらず適用できるので汎用性がある。これを用いて金属錯体の光励起状態や触媒作用の様子をその場観察する。従来法では、強い発光を示すがゆえに光吸収の観測に支障を来たす場合があったが、新しい方法を用いることで、これまで誰も見ることが叶わなかったブラックボックスの中身を「見える化」できる可能性がある。
光触媒は、近年、有機合成分野でも幅広く利用されるようになり、熱励起では不可能とみなされる高難度物質変換反応を可能にするなど、光触媒反応系の開発は目覚ましい発展を遂げている。平成元年度に、新しい光源(400億分の1秒幅のパルス状の光の列)を利用して、強い蛍光や燐光等の発光に邪魔されること無く光励起された分子が100億分の1秒の時間スケールで起こす高速現象を観測できる時間分解過渡吸収スペクトル(TA)装置の開発と計測法を確立した。それを用いて、短寿命光活性種(励起状態、イオン、ラジカル、電荷キャリヤー、光反応中間体など)、反応中間体や遷移状態の直接その場観察を行った。これにより、光触媒反応の初期過程に生じるそれらの化学種の同定と寿命を計測できる準備ができた。そこで実際の光触媒反応を行いながら計測する準備を開始した。最初に、金属錯体と白金ナノ粒子を組み合わせる事で行う光水素発生反応をとりあげた。この反応は光触媒の代表的なものであり、シンプルであるが、実用的価値の高いものである。予備的な実験により光触媒の光励起状態への遷移、励起種から白金ナノ粒子への電子移動による白金ヒドリド種の生成を示唆する吸収および発光の過渡スペクトルを得る事ができた。再現性の確認、ならびに反応条件の変化による過渡スペクトルの変化の観察と理論式による照合ができれば、トップクラスのジャーナルに掲載される結果となるが、残念ながらコロナ禍による研究の中断と本申請代表者の退職により、本研究を終了した。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 8件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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