研究課題/領域番号 |
19K05510
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
尾関 智二 日本大学, 文理学部, 教授 (60214136)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ポリオキソメタレート / 安定性 / 部分酸化 / 安定性評価 |
研究開始時の研究の概要 |
直径約3nmの大きさをもち、正二十面体対称性を示す球状132核ポリモリブデン酸イオンは、触媒への応用や、複合酸化物の出発原料として注目されている。しかし、溶液中での存在状態や安定性が不明であることが、この系の理解を妨げてきた。 本研究では、様々な割合でMoとWを混合して合成した132核ポリ酸イオンについて、紫外可視吸収スペクトルとX線小角散乱の温度・時間依存性を同時測定することにより、安定性の評価と分解生成物の構造決定を目指す。 本研究の成果は、球状132核ポリ酸の特長を生かした高耐久触媒の開発や、分解過程における中間生成物を活用した新規複合酸化物の設計への指針を与えると期待される。
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研究実績の概要 |
混合原子価球状132核ポリモリブデン酸イオン[Mo132O372(CH3COO)30(H2O)72]42-は、触媒への応用や、複合酸化物の出発原料として注目されている。しかし、溶液中での存在状態や安定性が不明であることが、この系の理解を妨げてきた。本研究では、132核ポリモリブデン酸イオンおよびそのタングステン部分置換体の溶存状態を明らかにし、安定性の評価と分解生成物の構造決定を目指す。 2019年度に132核ポリモリブデン酸イオンの溶液中での安定性を評価したことを受け、2022年度はその分解過程で生じる中間体、特に長時間経過後にみられる青色の原因となる物質についての考察を重点的に行った。青色溶液の結晶化条件を検討することにより、単斜晶系の結晶を得ることに成功し、X線結晶構造解析を行った。その結果、102個のMo原子が球状に集合したKeplerate型イオンの内部にMoO4四面体が4個程度内包された構造(合計Mo~106核)を見出した。102個のMo原子からなる骨格はMuellerが2000年に報告した化合物[{(Mo)Mo5O21(H2O)4CH3COO}12{MoO(H2O)}30]・~150H2Oと同様であるが、Muellerの化合物では五角形(Mo)Mo5ユニットの内側に酢酸が配位しているのに対し、今回見出された化合物ではMoO4四面体が配位しているという違いがみられた。本化合物におけるMoの平均酸化数をMuellerの化合物の+5.65と同程度であると仮定すると、出発物質である132核ポリモリブデン酸イオン(平均酸化数+5.56)から、わずかに酸化されている。すなわち、茶色の132核錯体は、部分酸化を受けて青色の~106核錯体を経て分解していくと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分解中間体として、Mo132核錯体が部分酸化を受けて生じた青色Mo~106錯体を見出したことは、非常に有意義な成果であり、当初の想定以上の知見が得られたと考えている。一方、タングステン部分置換体の分解中間体については、同様の呈色を確認しているものの、結晶構造解析には至っていない。それらを総合的に勘案すると、研究はおおむねに進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に見出した分解中間体であるMo~106核錯体については、結晶中でのディスオーダーのため、内包されているMoO4四面体の正確な数は明らかになっていない。今後、質量分析により明らかにしていきたい。また、タングステン部分置換体の分解中間体についても、結晶化のみでなく、質量分析なども併用して解明することを目指す。
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