研究課題
基盤研究(C)
真菌の生育に必須な細胞壁は,マンナン蛋白質,キチン,β-1, 3-グルカン,β-1, 6-グルカンから構成される.これらのうち,前三者に関しては,その合成に関わる蛋白質,そしてその合成経路がほぼ明らかとなっているのに対し,β-1, 6-グルカンに関しては,合成に関連する蛋白質は同定されているものの,生合成機構は全く未解明の状態である.本研究は,出芽酵母においてβ-1, 6-グルカンの合成に関与するKre蛋白質の機能を明らかにすること,真菌におけるβ-1, 6-グルカン生合成機構を解明すること,さらに抗真菌剤の開発にむけた応用技術の基盤の確立を目的とする.
β-1,6-グルカンの合成において特に重要な役割を持つと考えられるKre6の細胞内の挙動を調べた.共免疫沈降実験によりKre6が他の合成に関与する蛋白質と相互作用する可能性を示唆するデータを得た.またKre6がリン酸化を受けることを見出した.このKre6のリン酸化自体は以前に報告されていたが,このリン酸化が他のβ-1,6-グルカン合成に関与する蛋白質の機能低下により減弱することを見出した.またKre6の解析を行う過程で,出芽酵母のライセートにβ-1,6-グルカンを分解する活性を見出した.この活性は既知のExg1と過去に活性が明らかになっていない蛋白質に起因することを明らかとした.
真菌の細胞壁の非常に重要な成分であるβ-1,6-グルカンの合成経路に関して得られた本研究の成果は,真菌の生物学の理解という点において,学術的な意義があると考えられる.また真菌による感染症は,特に他の疾患や薬剤の服用により免疫機能の落ちた状態では未だ大きな脅威である.近年では新たにCandida aurisにより感染拡大も危惧されている.細胞壁β-1,6-グルカンの合成経路は,抗真菌剤の標的候補として期待されており,本研究の成果は医学的,社会的にも意義があると考えられる.
すべて 2022 2021 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Microbiology Spectrum
巻: 10 号: 1
10.1128/spectrum.00873-21
The Journal of General and Applied Microbiology
巻: 65 号: 5 ページ: 215-224
10.2323/jgam.2018.10.002
130007769151
巻: 65 号: 4 ページ: 180-187
10.2323/jgam.2018.09.001
130007706591
J Biol Chem
巻: 294(44) 号: 44 ページ: 15900-15900
10.1074/jbc.ra119.009491
Sci. Rep.
巻: 9 号: 1 ページ: 18341-18341
10.1038/s41598-019-54925-1
https://koubohakkou.net/