研究課題/領域番号 |
19K05785
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 賢一 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70508382)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | メカノセンシティブチャネル / イノシン酸 / MscL / 分子動力学シミュレーション / )物質排出担体 / パッチクランプ法 |
研究開始時の研究の概要 |
排出担体の性能向上は微生物による物質生産における生産性の向上に寄与する。物質生産に有用な排出担体の特性を明らかにするため、MscLを基礎とした新規汎用的物質排出担体の創製を行う。手段として以下に示す4つの研究ステージを繰り返す。 ①開口性の向上したMscL変異体を作成し、代謝関連酵素増強株に導入する。 ②変異型MscL導入株の物質生産性を評価する ③パッチクランプ法を用いた変異型MscLの機能解析 ④分子動力学シミュレーションを用いた変異型MscLの機能解析と変異型MscLのリデザイン
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研究実績の概要 |
メカノセンシティブチャネルは細胞が低浸透圧ストレスに晒された際に開口し、細胞内の低分子化合物を細胞外に排出することで膨圧の上昇に伴う破裂を防ぐ安全弁としての機能を果たすとされている。中でもMscLは他のメカノセンシティブチャネルと比較し高い張力により比較的大きな孔を形成するとされている。 微生物発酵においてこのチャネルを排出担体として利用することを考えた場合、制御が困難な低浸透圧ストレスを物質生産のトリガーとして利用することは現実的ではない。このため、通常培養時においても一定確率で開口しうる変異体を見出し、利用する必要がある。しかし、本チャネルは基質特異性が低いため、目的の物質以外にも多くの物質が細胞外にリークしてしまうことが予想される。高効率な物質排出担体の創製のためには、野生型と比較して開口頻度が適度に向上していること、基質特異性の変化に伴う目的物質以外のリークが抑制されることが必要と考えられる。 イノシン酸過剰生産を目的に代謝改変された大腸菌にG46D変異型MscLを導入すると、イノシン酸生産量の向上と合わせて生育速度の向上が観察される。これは細胞内に過剰蓄積されたイノシン酸が変異型MscLを介し細胞外へ排出されることで代謝が生育に適した方向へリバランスされたこと、基質特異性の変化により他の化合物のリークが適度に抑制されたことが予想される。 Error-Prone PCRにより変異が投入されたと考えられるmscL遺伝子をイノシン酸生合成を強化した大腸菌に導入して培養評価を行ったところ、生育が向上した株を2株取得した。これらはG46D変異体と同様に前述した条件2つを満たしている変異である可能性がある。この変異体の機能解析を進めることにより、物質排出担体としてメカノセンシティブチャネルに要求される特性を明らかにする足がかりとなることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
再現性のある正確な成育の評価系を構築するのに多くの時間を要した。また、新型コロナウイルス感染症による行動制限等のため、別の施設で行う必要のある電気生理学的解析関連の実験の遂行が困難であり、計画の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
イノシン酸過剰生成を目的に代謝改変が行われた大腸菌に導入することで生育の向上が見られたMscL変異体について、導入遺伝子の変異点を特定し、機能を予測するため配列解析を行う。また、次年度はコロナウイルス感染症の規制が緩和されることが予想されるため、これまで取得した変異型メカノセンシティブチャネルの特性を解析することを中心に研究を遂行する。さらに、新規物質排出担体のとして有力と考えられる変異遺伝子を持った株の更なるスクリーニングを行うことで、物質生産に適した変異を持ったMscLの特性を明らかにする。
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