研究課題
基盤研究(C)
炭疽菌は重篤な人獣共通感染症の起因菌であり、生物テロの細菌兵器として社会的に重大な脅威を引き起こしてきた。炭疽菌はまた、食中毒や院内感染の起因菌であるセレウス菌と遺伝学的に近縁であり共通の病原性遺伝子も保持している。炭疽菌・セレウス菌の芽胞に汚染された土壌中の長期間の芽胞汚染や、院内感染セレウス菌への感染防御対策は動物・公衆衛生の両領域において重要な課題である。本研究では、耐熱性芽胞菌の発育制御のため使用されている食品添加物を用いて、炭疽菌・セレウス菌の芽胞からの発芽抑制と栄養型細胞の増殖抑制活性の作用機序を遺伝子レベルで明らかにすることを目指す。
本研究の目的は、現在芽胞菌の増殖抑制に使用されている食品添加物で炭疽菌やセレウス菌に対して抗菌活性を有する化合物を用いて、通常用いられる環境負荷 の高い化学剤に代わる抗芽胞薬への応用や、既存の抗生物質に代わる抗菌作用を期待した抗菌薬への応用につながるための「人にも環境にも負荷の少ない殺芽胞 薬・抗菌薬としての各種天然由来食品添加物の多面的な利用・応用へと発展させるための基礎的な知見を得ることを目指す」ことである。 本研究では、食品添加物として使用されている各種天然由来抗菌性化合物による炭疽菌とセレウス菌芽胞に対する抗発芽作用と、野生株・薬剤耐性炭疽菌および 食中毒・院内感染セレウス菌に対する栄養型細胞の増殖抑制活性の抗菌作用機序を明らかにすることが目的である。 市販の甘草抽出液と炭疽菌芽胞を用いて「芽胞からの発芽の抑制」と「発芽後の栄養型細胞の増殖抑制」に分けて活性の検証を行った。37度の液体培地中に2.5w/v%、5.0w/v%、10w/v%の添加で芽胞の発芽が抑制され、その後の栄養型細胞の増殖もみられなかった。甘草抽出液で芽胞の発芽抑制が認められたことから芽胞発芽阻止において有効な薬剤の候補となると思われる。
2: おおむね順調に進展している
食品添加物として使用されている甘草抽出液による炭疽菌発芽抑制効果が認められたことから、最小芽胞発芽阻止有効濃度および最小栄養型細胞増殖阻止濃度を算出できた。引き続き芽胞抑制効果について検証を進めることとする。
芽胞抑制効果が認められる有効濃度がグリシンとの併用効果の期待される酢酸ナトリウムとの混合培養を試みる。塩分濃度、pHなど培地成分を調整することで芽胞発芽阻止、その後の栄養型細胞増殖抑制により効果的な培養条件の検討を行う。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 図書 (2件)
Microbiology Resource Announcements.
巻: 15 号: 2
10.1128/mra.00766-23
巻: 10 号: 5
10.1128/mra.01269-23
Frontiers in Microbiology
巻: 5 ページ: 1333946-1333946
10.3389/fmicb.2023.1333946