研究課題/領域番号 |
19K06068
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 (2022) 筑波大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
柴尾 晴信 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター(日吉), 訪問研究員 (90401207)
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研究分担者 |
松山 茂 筑波大学, 生命環境系, 講師 (30239131)
沓掛 磨也子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ付 (90415703)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 社会性アブラムシ / 植物ゴール / ホメオスタシス / 表現型多型 / 階級分化 / モルフ分化 / 季節適応 / 季節多型 |
研究開始時の研究の概要 |
多くの生物は、周囲環境から多大な影響を受け、個体自身の構造や機能をその環境に適応させている。一方、社会性昆虫は、巣という構造物を建築し、外部環境が変化しても巣やコロニーの状態を一定に保つホメオスタシスのしくみを進化させている。社会性アブラムシが誘導する植物ゴールは、他の社会性昆虫の巣とよく似た機能を果たす。本研究では、巣内ホメオスタシス調節におけるアブラムシと植物ゴールの役割の分析、ホメオスタシスの維持・破綻機構に関わる環境要因の特定、植物ゴールとの異種間コミュニケーションに関係する情報伝達物質の探索などをおこない、社会性アブラムシのホメオスタシスを基軸とした表現型多型の制御機構を解明する。
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研究成果の概要 |
社会性アブラムシが巣内の安定な環境下で季節を感知し、適応する仕組みを解明することを目的として、彼らが宿主植物上に形成するゴールの生理的機能や、ゴールが寿命を迎える前に生理状態の悪化の兆候が現れる時期と原因について明らかにした。ゴールは光合成能力を持ち、巣内での呼吸によって発生した二酸化炭素を吸収し、アブラムシに酸素を提供するなど、ガス交換の役割を果たす可能性が考えられた。ゴールの枯死には、ゴール内壁を覆うほどのアブラムシ個体数の増加が関与しており、これによりゴール組織の葉緑素量や光合成能力の低下、巣内の光強度の低下が起こり、これらが有翅型の分散個体の出現を引き起こす要因と考えられた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究では、社会性アブラムシによって誘導される植物ゴールが、光合成によりCO2を吸収してO2を発生させるという他の社会性昆虫の巣には見られないユニークな機能を備えていることを発見した。アブラムシはゴール組織の生理状態の悪化や周囲の明るさの低下といった局所的な情報から巣内ホメオスタシスの破綻という大域的な情報を得ることも新知見として得られた。天然の植物由来のにおい成分は、アブラムシのフェロモンの働きを促進・抑制する効果があり、フェロモンと組み合わせて用いることで、殺虫剤を使わずに効果的な天敵昆虫の誘引や害虫・天敵の行動制御が可能となる。これは環境低負荷型の新しい害虫防除技術の開発につながりうる。
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