研究課題/領域番号 |
19K06073
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
杉浦 真治 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70399377)
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研究分担者 |
山崎 一夫 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (30332448)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 被食防衛 / 捕食―被食関係 / 水生甲虫 / 半水生甲虫 / カエル類 / カエル / 化学防衛 / 物理防衛 / 逃避行動 / 有毒節足動物 / 捕食者 / 被食防衛戦略 |
研究開始時の研究の概要 |
節足動物には捕食者から身を護るために防衛物質を分泌する種が多い。しかし、被食者の毒物質によって捕食者から解放されたとしても、捕食者による噛み付きや攻撃、消化液によって被食者はダメージを受けるかもしれない。このような捕食者に対する耐性はこれまでほとんど注目されてこなかった。申請者は最近、オサムシ科甲虫の一種が捕食者の消化管内で長時間生存し体外に脱出することを発見した。この観察をもとに「有毒な節足動物は捕食者の消化液に対して耐性を持つ」という仮説を提唱した。本仮説を検証するために、有毒節足動物とその潜在的捕食者(カエル類)を用いて、化学防衛にともなう捕食者の消化液に対する耐性機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、さまざまな昆虫類において、在来カエル類(トノサマガエル、ツチガエル、ヌマガエル、ニホンアマガエル)および外来カエル(ウシガエル)に対する防衛行動を室内で観察した。ウシガエルについては環境省の許可を経て捕獲・飼育し、実験を行った。 結果、一部の水生甲虫種の成虫において、在来カエル(トノサマガエル)によって捕獲されても、舌に噛み付く、もしくは飲み込まれた後に胃に噛み付くことで、最終的にカエルによって吐き出されて生還する行動を発見した。ただし、外来カエル(ウシガエル)に捕獲された場合は、1種を除き、カエル体内から脱出することはできなかった。これらの甲虫類の大顎を実験的に切除すると、トノサマガエルによって容易に捕食(消化)されたため、大顎による噛み付きが重要な防衛手段であることが実証された。 高熱の防御物質を分泌するミイデラゴミムシについて、カマキリ類3種とトノサマガエルに対する防衛行動を比較し、論文としてとりまとめた。ミイデラゴミムシは天敵からの攻撃を受けると、体内に貯蓄したヒドロキノンと過酸化水素水を腹部末端で化学反応させ、その結果100℃近い高温でキノン類と水蒸気を発射する。トノサマガエルの多くの個体はミイデラゴミムシに舌で触れた瞬間(高熱の防御物質を発射する前)に攻撃をやめるが、カマキリ類は発射前に攻撃を諦める個体はいなかった。つまり、カマキリ類は前脚を用いてミイデラゴミムシを捕獲するものの、高熱の防御物質の噴射によってすべての個体が捕食を拒否した。一方、防御物質を噴射し尽くした個体を与えると、すべてのカマキリはミイデラゴミムシの捕食に成功した。つまり、ミイデラゴミムシはカエル類およびカマキリ類による捕食から逃れることができた。本論文はPeerJ誌で出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
半水生・水生甲虫類の対カエル防衛行動の論文および、外来ウシガエル類が昆虫類に及ぼす影響についての論文を今年度に学術誌に投稿できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
外来種であるウシガエルと在来種であるトノサマガエルに対して、同所的に生息する昆虫類の防衛行動を観察・比較し、ウシガエルによる在来昆虫類への影響を査定し、論文としてとりまとめる。 半水生・水生昆虫類における対カエル防衛を引き続き観察し、結果を論文としてとりまとめて学術誌に投稿する。
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