研究課題/領域番号 |
19K06081
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
安佛 尚志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 副ラボ長 (30392583)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ショウジョウバエ / 共生細菌 / スピロプラズマ / ボルバキア / ゲノム / ファージ / 腸内細菌 / ゲノム再編成 / 昆虫共生細菌 / 微小液滴 / シングルセルゲノム解析 / 次世代シーケンサー / 腸内細菌叢 / 腸内細菌-脳-腸相関 / 全ゲノム増幅 / ゲノム解析 / 脳腸相関 |
研究開始時の研究の概要 |
腸内細菌叢は、宿主の生理機能や健康に深く関わっているが、近年、脳機能や行動特性にまで影響を及ぼす事例が報告され始めている。「腸内細菌-脳-腸相関」と呼ばれるこの研究領域は、ヒトの精神疾患との関連からも関心を集めている。本研究では、モデル生物であるキイロショウジョウバエを研究対象とし、餌選択や配偶者選択といった行動を指標としたアッセイと、腸内細菌と宿主の遺伝子操作を組み合わせたスクリーニングを行うことにより、腸内細菌-脳-腸相関に関わる細菌および宿主の因子を明らかにする。本研究により、腸内細菌が宿主の脳機能や行動特性に影響を及ぼすメカニズムの解明が進むと期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、ショウジョウバエとその腸内細菌叢を研究対象として、腸内細菌-脳-腸相関に関与する細菌および宿主双方の因子を明らかにすることを目的としている。さらに、ショウジョウバエ体内に存在する、腸内細菌以外の共生細菌にも解析対象を拡げ、体液中に存在する共生細菌スピロプラズマやそのファージ、および細胞内共生細菌ボルバキアのゲノム解析にも取り組んでいる。2023年度は、ショウジョウバエ共生細菌のゲノム解析について、これまでに得られたデータの解析と論文化を進めると同時に、諸事情により遅れていたアッセイ系の構築と行動実験にも取り組み、今後の解析に向けた基盤を構築する予定であった。そこで、ショウジョウバエ共生細菌スピロプラズマ2系統とそのファージのゲノムについて、これまでに得られたデータの解析を進めたが、スピロプラズマゲノム中に存在するプロファージ領域が多数(10ヶ所以上)であったことや、おそらくはそれを反映して、産生されたファージのゲノムにも多様性が認められたことから、予想よりもスピロプラズマ及びファージの完全ゲノムの構築に時間を要した。現在、解析結果の最終確認を進めるとともに、論文を執筆中である。また、シングルセル解析により得られたフタスジショウジョウバエのオス殺しボルバキアの環状ゲノムの解析を進め、オス殺し遺伝子の候補とそれ以外の生殖操作関連遺伝子の存在の有無を明らかにした。オス殺し共生細菌の完全ゲノムは最近複数の昆虫から報告されつつあり、オス殺しの進化を考える上で意義のある成果である。なお、フタスジショウジョウバエのボルバキアを含む複数の昆虫共生細菌ゲノム解析及びシングルセル技術の有用性について、学会発表を行った。 一方、アッセイ系の構築と行動実験については、前年度に引き続き、研究時間の確保が難しかったため、計画通りに進めることができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
腸内細菌以外の共生細菌やファージのゲノム解析については、論文投稿に向けて、これまでに得られたデータの解析を進めたが、解析対象ゲノムの特異性により予想以上に時間を要したこともあり、年度中の論文発表には至らなかった。また、研究開始当初のコロナ感染症対策の影響に加え、2022年度より所属ラボの副ラボ長に就任したことでラボ運営業務が多忙となり、当年度も、予定していたアッセイ系の構築と行動実験を進めることができず、研究期間をさらに1年間延長することにした。そのため、「遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
腸内細菌以外のショウジョウバエ共生細菌やファージのゲノム解析については、スピロプラズマとファージの解析を完了し、論文化に注力する。オス殺しボルバキアのゲノムについては、解析を進めるとともに、場合によってはオス殺しの検証実験を追加した上で、論文化を目指す。 上記と並行して、これまで諸事情により遅れていたアッセイ系の構築と行動実験にも取り組む予定であるが、本課題の研究期間と労力を考慮して、行動実験以外の手法を用いて、腸内細菌が宿主(の脳)に及ぼす影響を検出することも検討中である。
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