研究課題/領域番号 |
19K06160
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
遠藤 力也 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 研究員 (90634494)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 酵母生態 / 微生物資源 / 樹液 / MALDI-TOF MS / フルクトース / 共生 / 森林昆虫 |
研究開始時の研究の概要 |
“樹液酵母”とは何か、好樹液性昆虫との関係性に着目し、生態・分類の両面からその正体を詳細に解明する。また、広く研究コミュニティで二次利用できるよう分離菌株を公的菌株保存機関へ寄託し、バイオリソースとして整備する。 代表的な樹液酵母について生理生化学的性状、分子系統学的位置を明らかにし、樹液中や樹皮上での増殖能や好樹液性昆虫との生物間相互作用を推定する。その上で、栄養共生や熱共生を念頭に、樹液酵母と好樹液性昆虫の共生関係の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
初夏~秋に、コナラやクヌギの樹幹に樹液が滲出している様子はよく観察される。樹液から様々な酵母が分離されることは半世紀以上前から海外で報告されているが、樹液中の酵母(樹液酵母)の存在量について定量的なデータが乏しく、国内で詳細に解析した研究も無い。我が国の森林における「樹液酵母」とは何か解明するため、2019年度には樹液から菌類を分離し菌種の特定と存在量の定量を行った。2020年度は2019年度の結果の再現性を確認する予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で研究の進捗が滞った。2021年度は再度樹液から菌類を分離し菌種の特定と存在量の定量を行うとともに、樹液のpH測定、樹液に含まれるグルコース・フルクトース・エタノールの測定を実施した。 2022年7月に、樹液に集まる昆虫(好樹液性昆虫)のうちムネアカオオアリとショウジョウバエを野外で採集し、酵母の分離と存在量評価を行った。 2023年3月に早春のコナラ樹液および樹液滲出部近傍のショウジョウバエとアリ類(未同定種)を採集し、酵母の分離と存在量評価を行った。2023年3月に採取した樹液中の酵母の存在量は、樹液 1μLあたり、3.5万~600万 CFU(コロニー形成単位)と極めて多かった。また、2023年3月に採集した樹液およびショウジョウバエからは同種とみられる(顕微鏡観察での簡易同定)酵母が共通して高頻度に検出された。一方ムネアカオオアリからは、樹液酵母とは異なるWickerhamiella属の未記載種が多数分離された。 また、2023年度はこれまでに分離・同定した樹液酵母の代表株、約60株(Saccharomyces属、Hanseniaspora属、Zygosaccharomyces属、Torulaspora属など)について、MALDI-TOF MSのレファレンスライブラリを構築し、樹液酵母の簡易迅速同定を可能にする基盤技術を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の拡大に伴って、2020年4月~8月にかけて所属機関から在宅勤務命令と出勤制限を受けた。それゆえ、ラボでの現場勤務時間が喪失(平日3~4か月分に相当)し、通常業務が逼迫したことで本課題遂行に充分な研究時間を確保できなかった。加えて、Covid-19拡大抑止の観点から、出張など移動の自粛を余儀なくされ、2020年度中のサンプリングおよび現地調査の機会が喪失した。2021-2022年度は状況が改善したが、2022年夏は記録的な猛暑の影響のためか、従来のサンプリング地における樹液溜りが十分に発見できなかった。2023年度はほぼ2019年以前の状況に戻り、挽回したものの研究進捗状況はなおやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の遂行には、樹液の野外調査・採集活動が必須である。2022年夏は記録的な猛暑の影響のためか、従来のサンプリング地における樹液溜りが十分に発見できなかったが、好樹液性昆虫を採集し、虫体から酵母を分離できた。また、年明けの2023年3月には早春の樹液溜りを発見・採集でき、これらから分離した酵母の群集構造の解析と種同定を進めている。2023年度は、樹液に集まる昆虫の一例としてムネアカオオアリから分離された酵母の解析を行ったが、樹液酵母菌叢ではあまり出現しないWickerhamiella属の未記載種が多数含まれていた。すなわち、樹液に棲息する酵母と、好樹液性昆虫から高頻度に分離される酵母の種が一致しないケースであり、「好樹液性昆虫の共生酵母は、樹液酵母群のうちのいずれかの種である」というこれまでの想定を覆す結果であった。 このようなケースがあることから、樹液酵母の生活史全容を解明するために、より多種の好樹液性昆虫とその随伴酵母種を特定する必要がある。これまでの研究から、主要なものに限っても、Saccharomyces属、Hanseniaspora属、Zygosaccharomyces属、Torulaspora属、Starmerella属などが樹液酵母であることが分かっている。2024年度は、より多くの好樹液性昆虫について随伴酵母種(共生菌種)を特定し、できるだけ多種の樹液酵母の生態解明を目指す。
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