研究課題/領域番号 |
19K06212
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
近藤 竜二 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (30244528)
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研究分担者 |
片岡 剛文 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (10533482)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 鞭毛虫 / 嫌気性 / 底泥 / 硫酸還元細菌 / 新種 / 海底泥 / 原生生物 / 嫌気 / 有機物分解 / 水圏堆積物 |
研究開始時の研究の概要 |
水圏環境には、溶存態有機物と生食連鎖を繋げる“微生物ループ”と呼ばれる重要な物質循環系があり、細菌摂食性の微小鞭毛虫(HNF)が生食連鎖へ溶存有機物を輸送する上で重要な役割を担っている。我々は、嫌気的な環境でも潜在的に高い細菌摂食活性を有する微小鞭毛虫の存在や、水柱に比べて数桁多い原生生物の現存量があることを明らかにした。水圏の嫌気的な底泥環境における物質循環過程を調べるうえで嫌気性のHNFの生理・生態学的特徴を詳細に調べる必要がある。本研究では、水圏の底泥から単離・培養した嫌気性HNFの代謝生理を明らかにすることで、底泥中の有機物の分解・無機化過程における原生生物の役割を解明する。
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研究実績の概要 |
福井県の三方五湖の一つである日向湖の底泥から、集積培養と段階希釈法により偏性嫌気性の原生生物が単離された。細胞の形態、細胞内の微細構造ならびに、18S rRNA遺伝子と数種の機能種遺伝子の系統解析から、Heteroloboseaに属する、少なくとも新属の細菌摂食性原生生物であることが分かった。 この鞭毛虫の生理・生化学的性質を調べるために、共存する原核微生物を極力少なくする必要があり、抗生物質と限界希釈を併用した培養を行った。その結果3種類の細菌しか混在しない培養を得ることができた。 この鞭毛虫の増殖生理と有機物分解能調べたところ、至適増殖温度は20℃、至適塩分は30.0‰であった。蛍光人工基質を用いて、各種有機物の分解活性を調べたところ、β-D-グルコースの分解活性は認められ、嫌気的な環境中での難分解性有機物の分解者として機能していることが示唆された。一方、α-D-グルコシダーゼ活性ならびにタンパク分解活性は認められなかった。 鞭毛虫の培養液に共存する細菌を2株単離した。1種類は硫酸還元細菌で、生理学的特徴とゲノムの配列から、Pseudodesulfovibrio nedwelliiと命名して、新種登録を行った。もう一つの細菌は、Bacillota門の細菌で、既にその全ゲノム配列の決定を行っている。その結果、新属新種であることが示唆されており、現在、その生理学的特徴を調べている。このBacillota門の細菌を前もって培養し、そこに原生生物を添加すると、安定して原生生物が培養できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
福井県の三方五湖の一つである日向湖の底泥から、集積培養と段階希釈法により偏性嫌気性の原生生物が単離された。光学顕微鏡観察ならびに電子顕微鏡を用いて細胞形態を詳しく観察したところHeteroloboseaに特徴的な形質が認められたが、一部にはこの鞭毛虫にしかないような特徴が認められた。 一方、18S rRNA遺伝子およびα-tubulin、β-tubulin、hsp90の各遺伝子の塩基配列を決定し、連結分子系統解析を行ったところ、単離株はHeteroloboseaに属することが示されたものの、形態的な特徴と遺伝子解析から全く新奇な原生生物で、少なくとも属レベルで新しいことが示された。 この鞭毛虫の生理・生化学的性質を調べるために、共存する原核微生物を極力少なくする必要があり、抗生物質と限界希釈を併用した培養を行った。その結果3種類の細菌しか混在しない培養を得ることができた。 この鞭毛虫の増殖生理と有機物分解能調べたところ、至適増殖温度は20℃、至適塩分は30.0‰であった。セルロースの分解活性は認められたが、デンプンとタンパクを分解することができなかった。 鞭毛虫の培養液に共存する細菌を2株単離した。1種類は硫酸還元細菌で、生理学的特徴とゲノムの配列から、Pseudodesulfovibrio nedwelliiと命名して、新種登録を行った。もう一つの細菌は、Bacillota門の細菌で、新属新種であることが示唆されており、現在、その生理学的特徴を調べている。このBacillota門の細菌を前もって培養し、そこに原生生物を添加すると、安定して原生生物が培養できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
新たに単離したBacillota門の嫌気性細菌を前もって培養することによって、嫌気性鞭毛虫が安定して培養できるようになった。前年度までに単離した硫酸還元細菌、およびこの細菌を加えてた微生物群集を嫌気的な底泥のモデルとして用いて、有機物の分解・無機化過程を明らかにする予定である。
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