研究課題/領域番号 |
19K06257
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41010:食料農業経済関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
片野 洋平 明治大学, 農学部, 専任准教授 (00407347)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2019年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 環境政策 / 林業政策 / 法社会学 / 社会学 / 地域政策 / 社会問題 / 社会科学の理論と方法 / 放置資産 / 所有者不明の土地問題 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、地域社会に放置される資産のうち特に共有林に着目し、①共有林の解消に至るにはどのような合意形成が必要か、②そして、その後の山林の適正管理はどのようにあるべきか、について明らかにすることを目標とする。本助成では、放置された資産のうち、所有関係が複雑な共有の資産の法的処理および適切な管理に着目する。本研究では、地域域社会で人々が維持できなくなった共有の山林に着目し、全国的に先駆けて、「山林の共有をいかに解消させていくか」「その後どのように管理していくか」について、明らかにし、その知見を学問的に発展させ、地域社会の持続的発展に貢献したい。
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研究実績の概要 |
本研究は、特に共有林に焦点を当て、共有林の解消に必要な合意形成と、その後の山林の適切な管理方法を探求している。過去に多くの用途で利用されてきた共有林は、現在、主にスギ・ヒノキの人工林として利用されているが、法的及び実質的な管理が崩壊しつつある。多くは適切な管理が行われていない状態で、自然災害のリスクも高まっている。 合意形成の必要性は、地域社会から離れた所有者が多いことや、新規参入者が実質的な管理者と連絡が取れないなどの課題から生じている。また、共有林が長期間間伐されずに放置されている実態もある。そこで、本研究は共有林の解消に向けた合意形成の方法と、山林の適切な管理方法を明らかにすることを目指す。 具体的には、林業政策の枠組み内で、人工林を自然に近い形(複層林)に再生させることを考えていた。これには、生物多様性や自然保護の観点からの重要性も含まれており、森林の多面的機能を高めるための方策として提案されている。しかし、このプロセスは技術的にも課題が大きく、継続的な努力が必要とされている。 研究の独自性と創造性は、共有林の問題を新たな視点から捉え、林業政策に環境学の視点を組み入れることにある。また、実際の政策運用においても、これまでの研究成果を基に寄付採納政策を地方自治体で試みており、その過程で新たな知見を得ている点も特筆される。全体として、本研究は放置されがちな共有資産の合理的な管理と活用の道を開くための、学問的及び実践的な試みとして位置づける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
世界的なパンデミックの影響で、研究進行に大きな遅れが生じている。まず、仕事の進め方が大きく変わった。リモートワークが普及し、オンラインでのコミュニケーションが必須となったことで、研究支援者との直接的な意見交換が難しくなり、研究のスピードが落ちている。さらに、自治体側の体制も大幅に変化した。パンデミック対応のためのリソース再配分により、研究プロジェクトに割り当てられる支援が減少し、計画していた研究活動の一部を縮小または延期せざるを得なくなっている。加えて、私生活においてもライフワークバランスが大きく変化している。家族との時間を確保しつつ、仕事とのバランスを取ることが一層困難になり、研究に割くことができる時間が以前よりも限られるようになっている。これら3つの要因により、研究の進行が遅れている現状は、多くの研究者が直面している課題であり、今後の研究活動の進め方に新たなアプローチが求められている。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果が遅れている状況ではあるものの、いくつかの成果を上げている点について記述する。まず、共有林の解消に関する考察をまとめた書籍を、2024年初旬までにミネルヴァ書房から刊行する予定である。この書籍では、共有林が持つ社会的・環境的な意義と、解消に向けた具体的なアプローチを、過去の事例研究や現地調査のデータを基に詳細に論じている。書籍の出版は、共有林に関する認識を広め、より良い管理策の提案に繋がることを期待している。 次に、立命館大学の高村教授と共に、共有林解消に関する書籍の分担執筆を行っている。高村教授とはこれまでにも複数の研究プロジェクトで協力しており、共有林に関する幅広い知識と経験を持ち合わせている。この書籍では、私たちの専門知識を生かして、具体的な解消策や地域における実践例について詳細に記述している。また、これまでの研究成果を研究会で報告することで、学問的なフィードバックを得て、内容の充実を図っている。 さらに、高村教授と共に行ったアンケート調査の分析も進めている。この調査は、共有林の現状に対する地域住民の意識や、解消に向けた地域の取り組みについての実態を把握するために設計されたもので、その結果は今後の研究方針に大きな影響を与える。アンケートの結果を基に、地域が直面している問題と解決策についての深い洞察を提供することを目指している。 今後は、これまでに得られた行政データおよびアンケート調査結果をさらに詳細に考察し、複数の論文を執筆する予定である。これらの論文では、共有林の解消が地域社会に与える影響や、持続可能な森林管理への移行を促進する政策提言など、実践的な知見を共有することを目的としている。これにより、学術界だけでなく、政策立案者や地域コミュニティにも役立つ情報を提供できることを期待している。
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