研究課題/領域番号 |
19K06381
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
鬼頭 克也 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (80270974)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | フコイダン / 血小板凝集 / チロシンキナーゼ依存性経路 / 受容体 / オキナワモズク / 犬 / 血中濃度 / 血小板膜ホスファチジルセリン / 血小板由来マイクロパーティクル / イヌ / G蛋白質結合受容体 / 組織因子経路阻害 / 分子量 / 血友病 / 血小板 / 血液凝固 |
研究開始時の研究の概要 |
血友病(血液凝固第Ⅷ因子欠乏症)は人及び犬に頻繁に自然出血を起こすが、有効な治療法は現在も確立されていない。オキナワモズク由来フコイダンが犬の血小板を活性化し、血友病を発症した犬の自然出血を抑制する一連の機序を解明することを最終目的として、本研究では、1)フコイダンによる血小板の活性化機序、2)活性化血小板による組織因子経路インヒビターの阻害と血液凝固能亢進、3)犬に経口投与したフコイダンの吸収動態と血小板の活性化、の3点を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の主目的は,1)フコイダンによる血小板活性化機序の解明,2)活性化血小板による組織因子経路インヒビター阻害と血液凝固能亢進の証明,3)犬に経口投与したフコイダンの吸収動態と血小板活性化の検証である。これまでに,1)組成(抽出法,硫酸化度)の異なるフコイダンでは,犬の血小板を活性化する強度(分子量及び濃度依存性)とその作用機序(チロシンキナーゼ依存性経路,G蛋白共役受容体を介した経路)が異なることを示した。また,2)フコイダンはTFPI(組織因子経路阻害因子)の阻害により凝固能を亢進(トロンビン産生の亢進による出血を抑制)すること,フコイダン刺激により活性化した血小板は,表面にホスファチジルセリンが発現して凝固反応の足場を形成するとともに血小板由来マイクロパーティクルを放出することで血小板周囲の凝固促進活性を高めること,を示唆する成績を得た。 今回は 1)について,犬の血小板膜上にあるフコイダン受容体を同定するために,コラーゲン受容体GPVIアンタゴニスト(Losartan及びTriplatin)をそれぞれ前処理して凝集態度の変化を観察した。しかし,いずれも再現性のある有意な結果を得ることができず,受容体を同定するに至っていない。3)について,健康なビーグル3頭を対象にフコイダン(分子量30万)を28日間経口投与(40mg/kg/day)し,血小板凝集能を全血インピーダンス法で測定した。凝集能は5種類の濃度のADP及びCollagenにより,凝集閾値濃度を求めて評価した。また,血液中のフコイダン濃度をオキナワモズク由来フコイダンに対する特異的抗体を用いたサンドイッチELISA法により測定した。その結果,投与後の血小板機能と血中濃度に有意な関係は認められなかった。フコイダン投与後の止血機能評価は血小板機能検査では不適で,これを包括的に評価する方法(TEG)が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血小板の凝集機序に関する研究報告の大多数は,ヒトやマウスの血小板を用いて行われており,犬の血小板を用いた報告は少ない。これまでの研究で、ヒトやマウスで用いられてきた抗体等の試薬あるいは手法の多くが,犬には応用できないことが分かった。加えて,新たに検討した血小板内シグナル伝達機構においても、犬はやマウスとは異なることが報告されており,フコイダンによる犬の血小板活性化機構やその受容体の解明,血液凝固能亢進との連関性を検討するためには,さまざまな試薬あるいは手法を検討していかなければならず,これらの対応に時間を要している。 新型コロナウイルス感染拡大のパンデミックによる海外からの試薬調達など物流の停滞が現在の進捗状況に影響した。また,血友病に罹患した犬が死亡したことで中断しているin vivo試験については,4年度も新たに4頭のイヌを血友病と診断したが,フコイダン投与試験への協力を得られないので、健康犬での投与試験に切り替えた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きフコイダンを認識する血小板受容体を同定することを目的に,GPVI,CLEC-2だけでなくG蛋白共役受容体やPEAR-1も対象にして検討を進める。組成(抽出法,硫酸化度)の異なるフコイダンがGPVIとCLEC-2のどちらの受容体を介して血小板を活性化するかを同定するために,ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ阻害剤のLY294002,wortmannin,ならびにBrutonsチロシンキナーゼ(Btk)阻害剤のイブルチニブ(PCI-32765)を用いて凝集動態を評価する。ついで特異的Gq阻害剤のUBO-QIC,さらにPEAR-1をブロックするanti-PEAR1 antibodyを用いて凝集動態を評価し,これらの受容体が関与しているか否かを検討する。 フコイダンはTFPIの阻害により出血抑制機能を発揮することが示唆された(2年度)ので,血友病発症犬から採取した3.2%クエン酸加抗凝固処理血漿にTFPIを添加して,希釈プロトロンビン時間法による凝固時間を延長させ,これにフコイダンを種々の濃度で添加し,同凝固時間が短縮するか否かを評価する。また,血小板由来TFPIがこれに関与しているか否かを検討する。 最後にこれまでに得られた結果をまとめ,オキナワモズク由来フコイダンが犬の血小板を活性化し,血友病を発症した犬の自然出血を抑制する一連の機序を考察する。特に,組成(抽出法,硫酸化度)の異なるフコイダンが犬の血小板を活性化する機序について,分子量、濃度,受容体,シグナル伝達経路の観点から整理する。
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