研究課題
基盤研究(C)
本申請では,これまで精神疾患との関連についてあまり注目されてこなかった糖脂質(ガングリオシド)に着目して,それらを大脳皮質や海馬など,限局した脳領域で欠損したマウスを用いて研究を行う.ガングリオシド欠損マウスはヒトの注意欠陥・多動性障害(ADHD)と類似の行動を呈するため,このマウスがADHDモデルマウスとして有用であることを示した上で,脳内の物質的変化(シナプス,軸索,ミエリン鞘の形成不全,機能障害)を探索する.同時に,ヒトADHD患者に処方される様々な薬物をマウスに投与することでADHD様行動の改善を試みて,ヒトADHDの理解や治療にガングリオシド欠損マウスの有効化を試みるものである.
セラミドを起点として合成されるガングリオシドは脳内の糖脂質の約1/3を占める主要な分子であり,ニューロンの成熟性にとって必須の機能を持つ.ガングリオシ形成の始点部にあたるラクトシルセラミド合成にはβ4ガラクトース転移酵素5および6がマウス脳内で必須である事を全脳で2つの酵素を欠損させたマウスによる解析から明らかにした(Yoshihara et al., 2018).さらに,脳内ガングリオシドの行動特性を明らかにするために終脳特異的にガングリオシドを欠損させたマウスを作出し,このマウスが活動性,運動性,注意機能亢進,恐怖条件付けの増強などのADHD等の発達障害モデルたり得ることを見いだした.
社会的にも大きな問題となっている発達障害に関して,様々なモデルマウスを用いた研究がなされている.申請者はガングリオシドと呼ばれる糖脂質と発達障害との関連を明らかにすることを企図して,それらの合成の起点部となるラクトシルセラミド合成に必須である2つの糖転移酵素を大脳皮質等で欠損させたマウスを作出した.このマウスの行動様式はADHD等の発達障害モデルたり得ることを見いだし,その原因や既知のモデルマウスとの比較により,新たなADHDモデルマウスを作出することができた..これらの知見は,新たなモデルマウスによる病態理解や治療戦略に向けて,学術的,社会的意義を持つものである.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
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