研究課題/領域番号 |
19K06622
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 (2021-2022) 国立研究開発法人理化学研究所 (2019-2020) |
研究代表者 |
石井 公太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 計測・線量評価部, 主任研究員 (50632965)
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研究分担者 |
風間 裕介 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (80442945)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 重イオンビーム / DNA修復 / 線エネルギー付与 / 変異創成 |
研究開始時の研究の概要 |
植物への重イオンビーム照射では、変異率が最も高くなる線エネルギー付与(至適LET)が存在する。申請者らは至適LET照射時に過剰なRPA1Eタンパク質がRAD51タンパク質の働きを阻害し、Polθタンパク質が関与する誤りやすいDNA修復経路による修復を促進させるという仮説を立てた。本研究では、全ゲノムシーケンスおよび生化学的アプローチにより、至適LET照射におけるPolθとRAD51の役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
重イオンビームは電離放射線の一種であり、高い線エネルギー付与(LET)をもち高頻度に変異を誘発する。研究代表者らはシロイヌナズナへの照射実験でLET = 30 keV/μmが最も変異率が高いことを発見した(至適LET)。至適LETでの照射当代での変異率は、LET = 22.5 keV/μm(低LET)での照射時の約2.5倍を示す。7.5 keV/μmのLETの差による変異率上昇はビームの物理的な作用では説明できない。研究代表者らは至適LETでの重イオンビーム照射時にRPA1E遺伝子が高発現することと、RPA1Eの機能欠損変異体では至適LET照射時の変異率が低LET照射時と同等となることを発見した。これらの結果から、RPA1Eの発現上昇によりDNA二重 鎖切断(DSB)部位へのRAD51のリクルートが阻害され、その結果誤りやすいDSB修復を促進させるという仮説を考案した。本研究では、至適LETと低LET照射時のDSB部位に結合するRAD51とPolθの量を比較し、また全ゲノム変異解析によりPolθを介したDSB修復の頻度を比較して本説を実証し、重イオンビームによる高頻度変異誘発の生物学的背景を明らかにする。 令和4年度は、前年度までに得られていたRPA1E過剰発現変異体に至適LETと低LETそれぞれのL重イオンビームを照射した2世代目のゲノムシーケンスデータについて全ゲノム変異解析を行い、変異の数・大きさ・種類を含めた変異スペクトラムを明らかにした。それぞれの系統において、変異スペクトラムが、野生株に対して至適LETの重イオンビームを照射した場合に近いことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度に遂行する予定であった2つの実験のうち、1) シロイヌナズナRPA1E遺伝子過剰発現変異体の全ゲノム変異解析については、低LETと至適LETの重イオンビームを照射した2世代目のRPA1E遺伝子過剰発現変異体の全ゲノム変異解析を行った。それぞれの系統において、検出された全変異に対して100 bp以上の大規模変異の占める割合が、野生株に対して至適LETの重イオンビームを照射した場合に近いことがわかった。一方、2) 過剰RPAのDSB部位へのRAD51リクルート阻害能の測定については、新型コロナウィルスの蔓延による影響を受け、実験を完了することができなかった。令和5年度に引き続き実験を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は2つの実験を行う。1) シロイヌナズナRPA1E遺伝子過剰発現変異体の全ゲノム変異解析:個体ごとの変異スペクトルのばらつきが大きかったため、低LETと至適LETの重イオンビームを照射したRPA1E遺伝子過剰発現変異体の全ゲノム変異解析を追加して行い、変異スペクトラムの傾向をより明瞭に明らかにする。2) 過剰RPAのDSB部位へのRAD51リクルート阻害能の測定:作製したシロイヌナズナのPolθとRPA1Eのペプチド抗体の評価をシロイヌナズナの幼苗を用いて行う。昨年度までに幼苗に低LETと至適LETそれぞれの条件で重イオンビームを照射した。令和5年度は抗RPA1E抗体を用いてクロマチン免疫沈降を行い、RPA1Eの結合したクロマチンを回収する。回収したクロマチンに対して抗Polθ抗体と抗RAD51抗体を用いてウエスタンブロッティングを行ない、DNAに結合しているRAD51タンパク質とPolθタンパク質の量を比較する。過剰なRPA存在下でのRAD51タンパク質のDSB部位への結合が阻害され、その結果Polθタンパク質がより多く結合するという仮説が正しければ、至適LET照射区では低LET照射区と比べてPolθの量が多く、RAD51の量が少ないという結果が得られるはずである。RPA1E過剰発現変異体に対して同様の実験を行なう。どちらのLET照射区でもPolθの量が多いと考えられる。
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