研究課題/領域番号 |
19K06671
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
猪子 誠人 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30393127)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 細胞間接着 / 上皮分化制御 / 幹細胞 / 組織構築 / 上皮分化 / 表層アクチン / カルシウム / ジアシルグリセロール / TRPC / 上皮幹細胞 / アクチン / ケラチン / 上皮組織 / 階層分化 |
研究開始時の研究の概要 |
上皮の細胞生物学は、上皮機能すなわち生体内部を守るためのバリア機能について、その分子理解を大成させた。その結果、物質透過性の分子理解や薬物送達へ応用等のヒントが数多く生まれた。その一方で、「これまで単層と思われていた生体上皮が実は分化度の異なる階層から構築されている」ことはあまり認知が進んでいない。これは、上皮組織再生技術や上皮性疾患理解などの生体応用面では、未だ障壁となる。 本研究では、応募者が新規開発した生体上皮を模倣する階層分化培養技術、すなわち前立腺2階層分化培養技術を元に、「正常上皮組織はいかに階層分化するか」について分子レベルでの初めての理解を目指す。
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研究実績の概要 |
生体上皮は身体を外部環境から守る細胞シートである。二層上皮では、基底細胞層に備蓄された幹/前駆細胞の分化を通じて、上皮構造が恒常的に維持される。 しかしこの上皮維持機構は未だ良くわかっていない。分化可能な上皮幹/前駆細胞の培養は容易ではないため、分化過程の観察や介入そのものが難しいからである。 これを可能にすべく、我々は簡単で高効率な上皮分化スイッチング技術を乳腺と前立腺で開発した。この技術は、(1) Rho-kinaseやSMADなどの阻害剤やWnt刺激剤を活用した初代乳腺幹/前駆細胞の長期増殖法と、(2) 阻害剤除去による簡単かつ効率的な上皮分化法、から構成される。
本技術の効用は、以下の実験で実証された。まず遺伝子発現比較解析を行い、分化・未分化状態に特徴的な変動遺伝子群を新たに抽出した。さらに細胞解析を行い、一意の転写因子群が細胞レベルで乳腺上皮の未分化および分化状態を決定することを確認した。これにはSNAIL、SLUGシグナルの調節が考えられる。また細胞膜上の一意のGPCRシグナル経路やイオンチャネルが乳腺幹/前駆細胞を機能的に維持していることを新たに発見した。 これらはカルシウムシグナルを減弱させることにより、幹細胞性の維持に働くと考えられる。これらの新規マーカーの生体組織内や3D階層培養での局在の再現性は免疫染色でも確認された。
要約すると、我々が開発した培養方法は、乳腺分化を決定する分子機構の検証に効果的なツールであり、上皮細胞生物学、生理学、再生医学、またその恒常性が破綻したがんの研究などに幅広く有用である。これらの成果は幹細胞生物学の国際雑誌に投稿した(2024年4月現在、査読中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍による研究試料の入荷不足や、予定していなかった研究課題への参加、また投稿論文のreject等で、本研究の進行は一時的に遅れた。
しかし論文改訂の過程で、その完成度や新規性は高まることとなった。これにより、並走する臨床検体を用いた癌研究への成果合流の目途もついてきた。よって、結果的には順調に進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上皮幹細胞の長期培養はもともと開発が遅れているため一般的でなく、課題や価値が理解されにくいなど、アピールが難しい面もある。
しかし上皮分化制御技術は、実際には学術、特に再生医学の非常に重要な開発課題である。幹となるデータはほぼ集まり、すでに投稿論文も査読段階にあるため、残りの研究費と期間を使って最大限の成果を出したいと考えている。
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