研究課題/領域番号 |
19K06737
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
塩尻 信義 静岡大学, その他部局等, 理事 (70162568)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 形態進化 / 肝臓構築 / 肝内胆管 / ゾネーション / hnf1 / glul / 繊毛 / 神経 / 平滑筋アクチン / zonation / VISTA法 / 脊椎動物 |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎動物の肝臓構築には、肝内胆管の走行が門脈に沿う”並走型”と門脈とは独立の”独立型”の2タイプがある。原始的脊椎動物肝臓で並走型が出現、これは四足類に続く一方、条鰭類の進化では並走型から独立型に移行する。この形態進化は分子レベルの実態に加え、生理的意義も不明である。本研究では、哺乳類で知られる肝構成細胞の分子マーカーを各分類群で発現解析したり、脊椎動物代表種の肝臓で発現する遺伝子を網羅的に解析することで肝臓構築の分子基盤を探索する。これらより、脊椎動物の進化の中で肝臓構築と機能が分子レベルでどのように変化したかを証明し、形態進化の仕組みと意義に迫る。
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研究実績の概要 |
脊椎動物の肝臓構築には、肝内胆管の走行が門脈に沿う”並走型”と、門脈とは独立に肝内に分布する”独立型”がある。無顎類で並走型が出現、これは四足類に続く一方、条鰭類の進化の中では並走型から独立型に移行する。脊椎動物の祖先動物とされる無顎類ヌタウナギ肝臓における遺伝子発現についてマウス肝臓と比較解析を行なった。マウス肝臓においては、アンモニア代謝に関係する酵素をはじめ種々の遺伝子発現が小葉内でzonation(帯状分布)を示す。尿素回路酵素は肝小葉の上流域で発現される一方、グルタミン合成酵素が中心静脈周囲1層の肝細胞で発現されることで、効率的にアンモニア代謝が行なわれている。アルブミンの発現も門脈域の肝細胞で発現が強い。ヌタウナギ肝臓でグルタミン合成酵素(glul)、アルブミン(alb)の発現解析を行なったところ、肝小葉内でzonationが認められることはなかった。これらの結果より、哺乳類肝臓で典型的に認められるzonationは脊椎動物の祖先動物ではまだ獲得されていなかった可能性が高いと考察した。また哺乳類において肝特徴的転写因子HNF1a、HNF1bはそれぞれ肝細胞と胆管上皮細胞で発現され、機能制御が行われているが、ヌタウナギ肝臓における制御を探るために、オルソログ遺伝子の探索と発現解析を行なった。ヌタウナギはhnf遺伝子1つをもち、無顎類/有顎類分岐後に起こった全ゲノム重複よりパラログHnf1aとHnf1bが生じたと推察された。ヌタウナギ肝臓では、hnfは肝細胞と、肝外及び肝内胆管の上皮細胞で発現していた。これらの結果は、ヌタウナギ肝臓の機能制御が祖先的であることを示唆している。さらに哺乳類マウスの肝臓構築の仕組みを探るため、遺伝子改変マウスの肝臓構築解析を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍のため、研究協力者の学生を含め、研究を機動的に進めることができなかった。また他の業務量が増加し、十分に研究を遂行することができなかった。 令和4年度は、脊椎動物の祖先動物であるヌタウナギの肝臓構築を解析し、構築が形態的なレベルに加え、遺伝子発現レベルでも祖先的であることを明らかにした。別の祖先動物であるヤツメウナギ類における肝臓構築についても今後研究を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
脊椎動物の肝臓構築の分子メカニズムを探る上で、分子マーカーの発現解析は欠かせないが、抗体を用いた分子レベルでの解析は限られるので、in situ hybridizationによる遺伝子発現解析を進めている。その最適化について効率よく進めるため、他研究者から情報を得つつ機動的に研究を進めていきたい。今後に向けて、無顎類ヌタウナギ肝臓における遺伝子発現に加え、無顎類の別グループに属するヤツメウナギ類肝臓についても同様の解析を行うことで、祖先的な肝臓の起源を証明していく必要がある。また条鰭類の進化において胆管分布が変わる仕組みの解明に向け、門脈配向の進化を含めさらなる形質の解析が必要である。
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