研究課題/領域番号 |
19K06764
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹内 裕子 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (10324823)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 情報変換チャネル / 電気生理学 / パッチクランプ法 / ケージド化合物 / 嗅細胞 / 線毛 / 嗅覚 / 感覚生理学 / 嗅覚情報変換 / CNGチャネル / Cl(Ca)チャネル / イオンチャネル / 嗅線毛 / セカンドメッセンジャー / シグナルトランスダクション / 神経細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
嗅線毛での匂い情報変換は嗅覚感度を調節する重要なポイントである。線毛は微細構造体であるため、物理化学の常識とは異なる挙動が展開され、理論のみならず、生線毛を用いることで高い実験技術も要求される。そこで、オリジナルの実験機器やシステムを開発することで、従来不可視であった研究領域に踏み込み「匂いを感じる」分子メカニズムを定量的に説明可能とする。構築した電気生理学的・光学的技術をパッチクランプ法と同時に用い、電流記録・光学測定を用いて、これまで不可能であった線毛上の情報変換チャネル動向を解析する。最終的に「匂い」感覚が、嗅線毛上のイオンチャネルの興奮と抑制で引き起こされる分子メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
本年度は、最も中心的な研究課題である嗅覚情報変換チャネルの興奮と抑制を修飾するメカニズムを解明するべく検証実験を行った。嗅覚情報変換の初段は嗅細胞線毛上に発現している2種類のイオンチャネルが担当し、これらのチャネルは線毛上に発現している。線毛は直径100ナノメートル程度であるため、生きた状態で活性やシステムを測定することが困難であることから、本研究課題では線毛の可視化・電流測定・匂い刺激・ケージド化合物解離という複数の手法を組み合わせることで、情報変換チャネルの活性を調査することを目的としてきた。鼻腔内に入ってきた匂い分子が持つ化学情報が生体電気信号へと変換する際、線毛上の情報変換チャネルを興奮させると共に抑制をも起こす。しかし依然として、その分子機構の詳細は解かれていない。キーとなるのがカルシウムイオンであることが明らかになりつつあるため、本年度は電気生理学およびカルシウムイメージング法から得られた結果を用いて分子動向を検証した。電気生理学的アプローチではCNGチャネルとCl(Ca)チャネルの連続的な開口による電流発生と電流増幅から興奮が引き起こされる。この興奮性電流は陽イオンの流入により初段が、流入したカルシウムイオンによりクロライドイオンの流出から次段の内向き電流増幅を引き起こす。また、線毛内に流入したカルシウムイオンはカルモジュリン分子と複合体を形成することでCNGチャネルにネガティブフィードバックを掛ける。これにより、発生した電流が抑制を受ける。これらの現象は共にカルシウムイオンが関与している。線毛内のカルシウムイオンの動向と嗅細胞での応答、生体電気発生メカニズムと物質濃度の関係性を調査した結果、線毛内のカルシウムイオンが興奮と抑制という相反する働きに関与していることが明らかとなった。これは嗅覚知覚や順応のしくみを分子の動きで説明しうる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では最終年度として「匂いを感じるときの嗅線毛の分子ダイナミクス」「情報変換チャネルの興奮・抑制の分子メカニズム解明」の2点に焦点を絞っていた。これらを対象にして、得られたデータ(嗅細胞からの電気データ)を元に精密な検証を開始してみると、両方のテーマを解釈し得ることが明らかになりそうであることが判明した。事実、検証を進めたところ、昨年度に発表した論文内に残された疑問点(線毛内での分子の実時間動向)を定量的に示すことが可能となりそうであることが示唆された。従って、引き続き検証を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は本年度が最終年度であったが、解析していく中で更に詳細な結果を得ることができ、未解決な点を明らかにできる可能性が高くなった。そこで、最終年度を更に1年間延長し、論文化することとした。今後における研究では、これまで得られた知見を元に、更に検証を進めながら、論文を執筆する。具体的には嗅細胞で発生する化学物質-生体電気変換シグナルは線毛上の情報変換チャネルに起因し、それらのチャネルを制御するための因子のダイナミクスを定量的に示すことを目的として、検証を行う。得られた結果は国際専門誌もしくは可能な限りハイグレードな国際誌に投稿する予定である。
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