研究課題
基盤研究(C)
キンギョの恐怖情動学習には小脳プルキンエ細胞の可塑的な変化が関わる。一方、運動性の学習にもこのニューロンの可塑性が重要であることが知られている。本研究では、「運動性の条件付けと情動性(恐怖)の条件付けとは同じ小脳神経回路を共有している」という仮説を検証し、その原理を明らかにする。さらに、反応獲得の時間経過が全く異なる情動性学習と運動性学習が、いかにして同じ小脳回路を使って実現するのかを解明する。手法として、条件付けに関わる情報伝達経路の遮断、神経活動の電気生理学的解析、新たな条件付け手続きの開発、を行う。本研究は、同一の脳内局所回路が複数のタスクに共有される原理の理解に貢献する。
本研究課題は、恐怖学習と運動学習における小脳回路の使い分けを明らかにすることを目的として計画され、無条件刺激が下オリーブ核経由でプルキンエ細胞に入力すること、さらに下オリーブ核が恐 怖条件付けに果たす役割について部分的に明らかにすることに成功した。しかしながら、感染症拡大に起因する実験材料の調達不調により更なる発展が達成できなかった。そこで、計画を修正して遂行された研究により、自由行動下における呼吸計測に基づく恐怖・不安情動の定量に成功した。またこれを応用して新奇環境におけるゼブラフィッシュの順化過程の記載に成功した。この成果は、魚類を用いた情動の神経基盤解明に貢献することが期待できる。
脊椎動物における小脳は運動学習に深く関わることが明らかになっているが、近年恐怖などの情動性の学習にも重要であることが示されつつある。本研究では、基本的な恐怖学習である古典的恐怖条件付けにおいて、延髄の下オリーブ核が重要な役割を果たすことをキンギョをモデルとして明らかにした。さらに、ゼブラフィッシュをモデルとして、自由行動下における呼吸計測に基づく恐怖・不安情動の定量に成功した。またこれを応用して新奇環境におけるゼブラフィッシュの順化過程の記載に成功した。これらの成果は、情動の基本的神経機構とその進化の解明に貢献することが期待できる。
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https://gsbstop.hiroshima-u.ac.jp/interview/ja/yoshida.html